神聖ローマ帝国/菊池良生


「この国にフランスは嫉妬し、イタリアは畏怖し、教皇は愛し、そして憎んだ。」――本書帯の文句より

 高校世界史レベルの知識があれば無理なく読める。が、Wikipediaを補助資料に使えば知識ゼロからでも読めないことはないと思われる。

 神聖ローマ帝国、というとハプスブルクのイメージがあるかもしれないが、この本は半数の章を大空位時代以前に割いており、真に「帝国」であった時代のこの帝国についての記述が豊富であるのが特徴だ。
 個人的にはフリードリヒ2世とカール4世の記述の為に買ったのだが、他の章もしっかり読めた。
 著者曰く皇帝列伝形式なので好きなところから読み始められる。が、通しで読んだ方が分かりよいと言えば分かりよいだろう。

 このブログの読者には神聖ローマ帝国が好きな人は多いと思うが、その実態を把握するにはかなり手を焼きかねない。巷に溢れているハプスブルクの歴史に関する本だけを見ても、神聖ローマ帝国の実態は見えてこない。
 成り立ちから、三大王朝時代、ハプスブルク時代、30年戦争による「死亡診断書」そしてナポレオン戦争による「埋葬許可書」まで、記述の濃淡はあるものの、しっかりした通史だった。入門には最適である。

 決して神聖ローマ帝国=ドイツではなく神聖ローマ帝国≠ドイツでもない。神聖ローマ帝国とは、そしてヨーロッパにおける皇帝とは何ぞや、という問いに対して、この本を一冊読めば一応の答えを得られるだろう。

 それにしてもボヘミア(チェコ)の神聖ローマ帝国内での役割の大きさには驚かされた。ボヘミア出身で神聖ローマ帝国で大きな役割を果たした人物とい言えばカール4世くらいだと思っていたのだが、そこかしこでボヘミアの名前が出てくる。なかなか強かな一地域だったようだ。

 個人的に好きな皇帝フリードリヒ2世についての記述にも一章を割いてあった。

 これで740円+税だったのはかなりお買い得だったと思う。

章立て

序章  神聖ローマ帝国とは何か
第一章 西ローマ帝国の復活
第二章 オットー大帝の即位
第三章 カノッサの屈辱
第四章 バルバロッサ――真の世界帝国を夢見て
第五章 フリードリッヒ二世――「諸侯の利益のための協定」
第六章 「大空位時代」と天下は回り持ち
第七章 金印勅書
第八章 カール五世と幻のハプスブルク世界帝国
第九章 神聖ローマ帝国の死亡診断書
第十章 埋葬許可証が出されるまでの百五十年間

 余談だが、アマゾンでは古代ローマ史、古代史に分類されている。神聖ローマ帝国は中世以降の国家だ。分類した人は大馬鹿者である。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ