風雲児/白石一郎
直木賞作家の手による冒険小説。
戦国時代末期、アユタヤ朝時代のタイに渡り、日本人町の頭領・日本人傭兵部隊の隊長となり、最後はリゴールの王にまで上り詰めた山田仁左衛門長政が主人公。
東南アジアものの歴史小説は少ない。このブログで以前紹介したのはベトナムの「蒼き海狼」だけだ。
そういう状況ではあるが、タイの山田長政ものは複数の作家が書いており、この作品もその中の一冊である。
海洋冒険者を書く白石さんらしいと思うのだが、まず最初に長崎へ行く行程が書かれ、長政は台湾に渡る。タイへ到着するのは上巻の終わりが近くなってからである。
タイへ付いてからの長政はめきめきと頭角を現すが、立場が昇るにつれて否応なくタイの政争に巻き込まれていく。
最期までしっかり書ききっているあたり、ハッピーエンドにはどうしてもならないのだが……。
東南アジア史に興味のある人、日本の枠の中の歴史小説に飽きたが世界史ものに手を出すのがためらわれる人におすすめしたい作品である。
(ちなみにwikipediaによると史実では山田長政が任じられたのは知事であって王ではないそうである)