李嗣源/仁木英之


 五代十国後唐の英傑、李嗣源を主人公とした小説。この類のテーマは中国史ものでもかなり貴重だと思われる。
 何よりもまず突厥沙陀部の「独眼龍」李克用が活躍する。北方草原を完全には漢字文化圏として描かずに所々片仮名を使っているのも差別化できていて分かりやすい。
 また、この時代はキタイ<契丹>の遼の勃興期であり、建国者である耶律阿保機や彼に使えた漢人の韓延徽も登場し、好人物として描かれている。かなり北方草原好きには嬉しい。

 登場人物、勢力が多く、関係も複雑なので戸惑うこともあるが、この時代を舞台に選んだ以上いたしかたないことだ。むしろそれこそが五代十国時代の魅力であるとも言える。知識が無い場合は「疾駆する草原の征服者」か「小説十八史略」あたりで予習すればよかろう。

 欲を言えばドロップアウトする登場人物はきっちり区切りをつけて退場して欲しかったとは思うが……。

 同じ作者が五代後梁の朱全忠を主人公にし、この作品とも時代が重なる「朱温」(朱温は朱全忠の名)という作品も出版しているそうなので近いうちに読みたいと思う。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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