クビライの挑戦/杉山正明


 杉山正明教授の手によるクビライ・カアンを中心に据えたモンゴル帝国解説書。
 
 概説史ではない。前半部のいつものモンゴルのマイナスイメージ打ち消しのための論や、軍事展開の解説もあるがそれはどちらかというとクビライの背景の説明であって、本書の主眼は大元ウルスを、あるいはユーラシア全域を覆ったクビライが打ち立てたシステムについての解説に置かれている。

 草原の軍事力、中華の経済力、ムスリムの商業力、この三本柱が世界帝国を支えたと言う論はなかなか興味深かった。

 いきなり固有名詞が出てきたりするので初学者には厳しいものがある。一方その割りには一次史料の呈示が少ないので研究者向けとも思えないのだが、著者が対象としている読者層はどういったものだったのか……。まあアメリカ滞在中に書いたとのことなので仕方ないのかもしれないが。それはともかく、モンゴル時代を俯瞰する上で有用な論の一つが展開されているので一読の価値はある。
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鉄勒京二

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