青嵐の譜/天野純希


 最近元寇ものを続けて読んだが、やはり軍記物が無い時代の人物はイメージが確立していないせいか書く人によってキャラクターが違っているのが面白い。これは小説すばる新人賞を取った作家の書き下ろし作品ということらしい。政権ではなく、民衆や地元の武士たちから見た元寇ものである。
 視点は徹底して中央に置かない。ので、北条時宗も安達泰盛も一瞬しか登場しない。主役級の三人は皆架空の人物で、市井を歩くたいして地位のない人々だ。
 「1500円程度の値段で、ハードカバー一巻完結の歴史小説」に特有の軽さがあるが、それなりに面白く読める。例によって漢字人名片仮名人名入り乱れているが、表記の統一と適度な登場人物の絞り方が功を奏しており、読みにくいとは思わなかった。以前レビューした「乱神」と同じく、歴史小説をあまり読まない人にもお勧めできる。

 かなりエグく時には暗いエピソードもあるのだが、途中から登場する竹崎季長が愛嬌のある人物として描かれており、いいカウンターになっている。
 蒙古側で台詞があるのは范文虎。とは言ってもそれほど焦点の当たるキャラクターではなかったが……。
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鉄勒京二

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