《ドラキュラ公》ヴラド・ツェペシュ/清水正晴


 「オスマン=トルコと戦い祖国の危機を救った英雄《ドラキュラ公》の生涯」――本書帯の文句より。
 ブラム・ストーカーのドラキュラ伯のモデルとなった男、ワラキア公ヴラド3世の評伝。
 
 生前からハンガリーのマーチャーシュ王のネガティブキャンペーンの対象となり(ヴラドにとっては折悪く、印刷術の発明の時期である)、その後もブラム・ストーカーの小説で邪悪な印象が付いてしまったヴラド3世だが、ルーマニアではオスマン帝国の征服王メフメトから祖国を救った英雄であった。
 そのヴラドについて、前史を含めて一冊にまとめたのがこの本である。

 デヴシルメによる徴兵で一時期オスマンに渡っていたヴラドは祖国へ帰り、防衛戦争を指揮するようになる(このあたりの経緯はアルバニアのスカンデル・ベクとよく似ている)。一時期ハンガリー領トランシルヴァニアの父の敵フニャディ・ヤーノシュを頼ったりしながら、彼は中央集権体制を敷き、オスマンに対抗すべく国力の増強を計る。
 隣国のモルダヴィア公シュテファン(後に大公と呼ばれるほどの男であった)との関係も詳しく、またハンガリーの内情にも触れられている。

 ヴラドの残忍さが強調される伝承も事実無根ではなく、それなりに史実的な裏付けがあるが、それらにも真っ当な理由があったことが示唆される。部分的に小説風に補われている部分もあるが、読み物なのでそれはそれで構わないだろう。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ