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サラディンを生んだ者/小林霧野



 「鬼」ザンギーが格好いい。「卓越した政治家」アイユーブが格好いい。「隻眼の獅子」シールクーフが格好いい。サラディンは……ヘタレである。
 簡単に言うとそんな物語。
 サラディンというとイェルサレムを奪回して第三回十字軍を率いた獅子心王リチャード1世と渡り合った英雄という見方が強いだろう。あるいは、少し詳しい人なら彼が詩人になりたがってエジプト遠征に行くのを心底嫌がったという逸話を知っているかもしれない。この本は、どちらかと言えば後者のイメージを物語として書き起こしたものだ。
 本書のサラディンは、とてものこと英雄と呼ばれるような男ではないように思える。しかし、そんな男が、正真正銘の英雄になるのである。言うなれば、この物語は起承転、までである。結は皆が知っている歴史そのものだ。面白い試みだと思う。

 とは言っても、この小説が物語として完成していないというのではない。サラディンを主役として見た場合はそうなのだが、彼の先駆者達を中心に据えた見方をした場合、一つ一つの物語がしっかりとした作りになっている。
 アイユーブとシールクーフの兄弟、ザンギーとヌールッディーンの親子、これらの人物が主役を張る小説は日本中探してもそうそうあるまい。
 個人的にザンギーは信長に比したいのだが、この小説のザンギーはまさに信長であった。

 読みやすく面白いが、字数に比べて(というのも一頁当たりの字数が少ない)千円強と値段が高めかつ新品は入手困難なので、図書館等にあれば目を通してもらいたい。ちなみに、Amazonで最初の数頁が読める。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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