ロードス島攻防記/塩野七生



 エジプトのマムルーク朝によって地中海へ「掃き出された」聖ヨハネ騎士団はロードス島で命脈を保っていたが、そこへも遂にオスマン帝国の征服の波が迫る。守るは騎士600、傭兵1500、島民で参戦可能な者3000、対してオスマン帝国軍は20万――。
 塩野七生女史の地中海戦記三部作の第二弾。聖ヨハネ騎士団守るロードス島を、オスマン帝国の大帝スレイマン1世が陥落させるまでの経緯を描写、終章にはその後の騎士団の行く末も簡単に説明してある。
 聖ヨハネ騎士団が主役を張る小説で、ここまで時代考証のしっかりしたものはそうそう無いだろう。城郭建築の変化に注目するあたり、流石である。当然聖ヨハネ騎士団が主役なのだから、少々西洋側に寄っていないこともないが、視点が中立寄りであったことにも感心した。

 しかし歴史書的な記述であって、えぐい描写も感動的な描写もさらっと書いてあるので、行間を読むつもりでじっくり目を通さないと起伏に欠ける面はある。読んでみればわかるが、本文中、台詞や登場人物からの視点描写がやたら少ない。臨場感のある大スペクタクルを期待している人には肩透かしかもしれない。

 中世から近世への扉はイスラムによって開かれた。十字軍以降のイスラム世界からの西洋古典文明の再輸入によって花開くルネサンス。コンスタンティノープルの陥落による、イタリア商人の没落と、その人材のスペインへの流出、そして大航海時代の幕開け。そして騎士の時代の終焉は、東ではチャルディランの戦い、西ではこのロードス島の陥落に象徴されるのではないか。時代の戦闘は火器と物量を必要とし始めていたのである。
 その転換期を切り取ったこの本は、西洋史を理解する上でも大いに役に立つだろう。


章立て

第一章 薔薇の花咲く古の島
第二章 聖ヨハネ騎士団の歴史
第三章 「キリストの蛇たちの巣」
第四章 開戦前夜
第五章 一五二二年、夏
第六章 一五二二年、冬
エピローグ

 ただまあ、巻末に参考資料の一覧が無いのは不便である。どこまでが真実でどこからが創作かの判断が付きづらいし、後に続く人にも不親切ではないかと思う。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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