馮道――乱世の宰相/礪波護


 仕えた君主は五朝八姓十一君、五代十国時代に王朝を渡り歩き、あまつさえ異民族のキタイにも仕えた漢人宰相馮道の評伝。五代の通史としても簡便。
 
 馮道は「李嗣源/仁木英之」や、「宋の太祖 趙匡胤/小前亮」等にも登場する政治家であるが、彼は王朝を渡り歩いたため後世の儒者からは破廉恥漢、変節漢と評されてしまう。しかし、彼が真に目指したのは民のための政治であった、とする。
 身辺は清廉潔白であり、ユーモアを愛し、物と競うことはない。それでいて乱世で天寿を全うしたというだけで驚くべきことだが、彼はそれぞれの王朝に仕え、出来る限り民衆の立場に立って(本書の表現を使えば「泥臭さ」を忘れず)政治を行ったのである。虐殺を諫め、文化事業を推進し、民が飢えることのないよう計らった。本書はその「民のための政治」を評価しようとしている。

 五代の興亡も概観しており、馴染みの薄いこの戦乱の時代を理解する役に立つ(管理人は冒頭の地図が非常に有り難かった)。所々で取り上げられている各論めいた項には、李嗣昭の財力がこの時代に与えた影響、宦官勢力の興亡、キタイの遼国の統治機構の簡単な紹介などなど……。

 中国史は門外漢の管理人でも読めたので、わかりやすい一冊であるとも言えよう。お勧めである。
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鉄勒京二

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