アッティラ大王とフン族


 ヨーロッパ史とステップの専門家二人によるアッティラに関する概説。
 著者が冒頭で「またアッティラか!」と述べている通り、アッティラに関しては既に多くの人が書いてきた。ではこの本の価値はどこにあるかというと、後世に作られたイメージを排除し、同時代史料からアッティラとその帝国の像を示し直そうとした点である。

 訳者に問題があるわけではないのだろうが、西洋人なら教養として当然知っているべき文脈を下敷きにして書いてある部分が多いので、ローマ史をある程度詳しく学んでいない者にとってはいささか文意の確認に手間取ることがある。
 とは言え、中立的な視点から書かれた詳細な解説である価値は大きく、役立つものだろう。

 蛮族の王として何故ガイセリックやテオドリックを差し置いてアッティラのみがここまでの知名度を獲得しているのか、という点についての考察が個人的に面白かった。すなわちヨーロッパ都市文明と対比される「アジア」の「遊牧民」であり、「キリスト教に対するアンチヒーロー」という面があるというわけである。

 巻末にはプリスクス『断片』八の全訳が掲載されており、この分野に興味のある人にとっては有用だろうと思われる。
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鉄勒京二

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