インド最後の王 ティプー・スルタンの生涯/渡辺建夫


 列強によるアジアの植民地化が進む時代、四次に渡る対英戦争を戦い抜き、壮絶な最後を遂げたマイソール王国のあるじ、ティプー・スルタンの評伝。30年近く前の本だが、類書が無いため一読の価値がある。
 アジア諸国の中で植民地化を免れた国と言えば、日本、タイ、分割されながらも革命を成し遂げたトルコといった国々が思い浮かぶ。しかし、果敢に抵抗を試み、消えていった国もまた存在した。
 18世紀の半ばに即位したマイソール王国のあるじ、ティプー・スルタンは「マイソールの獅子」と恐れられたハイダル・アリーの息子である。
 ティプーはヨーロッパの哲学、科学に興味を示す一方、敬虔なムスリムでもあったという。君主でありながら、ジャコバン・クラブの名誉会員でもあったという。
 一件矛盾したような彼の内面は、ヨーロッパ文明に染まってしまった我々の価値観で計れるものではなかった。しかし、そこには明らかに理念があり、展望があり、そしておそらくは野望もあった。例えそれが結果的に失敗したのだとしても、その試みを問い直すことは、我々にとって無意味ではないと著者は主張する。

 30年近く前の本であるが、ためにヨーロッパ中心史観への強い怒りが感じられる。近年でこそ書き改められるようになってきたものだが、当時のことを考えるとその感情も宜なるかなと言うべきか。
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鉄勒京二

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