ビザンツの鷲/斉城昌美


 15世紀頭の東欧~中央アジアまでを横断する冒険小説。各巻のタイトルは「1帝国晩照」「2群狼山河」「3覇王呪殺陣」「4西域風塵」。とあるビザンツ貴族にして商人の男が変転の末、ティムール帝国まで旅を続け、そこでティムールの一族を巡る陰謀に巻き込まれていく。
 
 敵討ちのためにコンスタンティノープルを脱出せざるを得ず、東へ進路を取る「ビザンツの鷲」ことアレクシオス。彼に同道するのは、弟のレオン、ヨハネ騎士団の騎士だったジャンニ、エルズルムの太守の息子ジャラルッディン。それぞれが魅力的なキャラクターとして描かれている。

 時はティムールの晩年、1400年頃か。史実にない補完と想像の部分も大きいが、確かに歴史上の人物はその時そのままに動いており歴史小説とも時代小説とも言い難い部分がある。三巻以降は「王書」にモチーフを取ってややファンタジーめくが、ティムールの跡継ぎ争いをめぐってのヘラートのシャー・ルフ(どうも作者はシャー・ルフがお気に入りらしい)の動きも書かれ、史実の要素もおろそかにはなっていない。
 ビザンツの宮廷社会における血なまぐさい陰謀や、ティムールの複雑な性格など、なるほどこう書けるかと思わせられるところが多い。

 それにしてもよくもまあ20年近くも前にティムール帝国を舞台にした小説を書こうとしたものだと思う。表紙・挿絵が古くさいのはまあご愛敬か。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ