共生のイスラーム/濱本真実


副題は「ロシアの清教徒とムスリム」。リブレット「イスラームを知る」シリーズの一冊。
 
 内容は沿ヴォルガ・ウラル地方のムスリムと清教徒の関係を通観する。ソ連時代以前までで一応既述は終わっている。

 一章ではヴォルガ・ブルガールからジョチウルスにかけての草原のイスラーム化が説明されており、個人的にはここが一番面白かった。ロシアの「タタールのくびき」史観が広がっていったのも、ジョチウルスのイスラーム化と関連があり、正教とイスラームの対立という点から読み取れるという。

 以下、モスクワの勃興以降、征服され統治される立場に立ったムスリムと、統治する立場に立った清教徒、ロシア帝国との関係が書かれる。
 ロシアの対ムスリム政策は時代によっても地域によっても一環しておらず、融通無碍な部分があるという。また、近代イスラーム思想改革の流れはロシア内にも広がっていったが、そこにはロシアの統治下にあるという特殊な状況下での特徴的な思想が見られるようだ。
 その後のソヴィエト政権で清教徒とムスリムの関係は一度精算されることになる、と記し、ソ連解体後、再び二宗教は共生を問われることになる、と書いて筆を置いている。

 需要の関係からかこの体裁の本にしては一冊1200円と少々値が張るが、内容は濃いと言えるだろう。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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