イスラーム世界の危機と改革/加藤博


 世界史リブレット37冊目。著者はイスラーム圏の社会・経済史の研究で有名な加藤博教授。
 
 近代イスラーム世界の危機、そしてそれに対しての改革を論じる。
 タンジマートやムハンマド・アリーの近代化政策、イランのタバコ・ボイコット運動、アフガーニーやムハンマド・アブドゥによる思想の整備、ワッハーブ運動、アブドゥルカーディルの反乱など、この分野に関わる著名な歴史的事件・人物を多く取り上げる。が、正直ページ不足が否めない感がある。それぞれの事件を一つ取り上げただけでも世界史リブレットなら一冊書けてしまうだろうと思うのだ。概観、というには取り上げた事件が多すぎ、地域が広すぎる。

 ただ、無用の本かというとそうではない。
 イスラーム法が民法分野など一部に押し込められることによってイスラーム世界の統一性が崩れ去っていったこと、いかなる帰属意識(宗教・民俗(言語集団とほぼ同義か)・土地)を根本としてスローガンとするかによって変わっていったアラブのそれぞれの地域の民族運動、なおも強化され深化するイスラームのネットワーク……などなど興味深い記述に富む。
 この時期のイスラーム世界は西洋に追い越されたように見え、いささか暗いイメージがあるが、改革への活力に富んだ時代でもあったのだと気付かされた。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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