スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

イスラームの国家と王権/佐藤次高


 故・佐藤次高教授の一般向けイスラーム国家論。
 
 ネットワーク社会論や市場論、あるいはウンマ(イスラーム共同体)の重視によってこれまで軽視されてきた「国家」とその「王権」について考えるべく書かれた本である。言い換えると、イスラームにおいては必要悪以上のものでないとされてきた「国家」が、果たしてきた役割は本当にそれほど小さなものだったのか、という問題を設定し、各面から国家が果たしてきた役割などを見ていく。
 多角的に国家を見ていくため、部分部分だけ見ていくとまとまりがないようにも思えるが、包括的に国家の仕組みとその歴史的展開を把握しようとするとこういう書き方になるのだろう。またその各部の論考にも一部分を抜き出しただけでも十分に面白い論考があるので、興味深く読める。

 個人的に面白かったのはエジプトの歴史家マクリーズィーの経歴とそのマムルーク朝国家論、イクター制の成立と展開、フトバの役割の詳説などであった。

 緻密な王権論が展開されているわけではないが、フトバによる制限、法支配はウラマーたちに委ねられていることなどを鑑みた上で、古代オリエントやビザンツの王権と比較し、その性格を論じてもいる。

 これからの研究分野であるところも多いだろうから、問題提起とその材料の提示という面もある。著者は非常に残念なことについ先日亡くなってしまわれたが、今後の日本のイスラーム史研究の動向に注目したい。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。