十字軍 その非神話化/橋口倫介


 日本の十字軍史家、橋口倫介氏の十字軍概説。岩波新書からの出版。
 
 岩波新書というと中公新書や集英社新書に比べてお固いイメージがあるが、本書はごく普通の十字軍史概説である。あくまでメインは十字軍、西欧世界であるが、ビザンツ及びイスラーム世界の史料の記述も適宜必要に応じて盛りこんである。
 記述の半分ほどは第一回十字軍とその社会・経済・思想などの幅広い背景で、残りを1291年のアッカ陥落までの歴史にあてる。

 面白いのは、イスラム側の対十字軍戦を把握する枠組みが「アラブが見た十字軍」とは異なっている点で、個人的にはこの本のアレッポ=ダマスカス同盟という考え方の方が捕らえ方としては分かりやすかった。

 本書は、ざまざまな要因を分析し、歴史学上の研究をもとに書かれた本であり、伝承や伝説を利用することはあれそのまま語っているわけではない。
 十字軍の歴史をあくまで歴史学的に研究してきた著者は「十字軍は戦争の歴史である。しかし、その戦争は「聖戦」という神話の中に閉じこめられるべきではない」と書いている。その意味は、本書を読めばわかるだろう。
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鉄勒京二

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