アラビアの医術/前嶋信次


 アラビア科学華やかなりし頃の医師・医学者たちの群像。
 著者がまえがきで「本書は、医術を通じて中世のイスラム社会と文化との特色を描写しようとしたものである」と述べている通り、タイトル通りにアラビアの医術そのものを扱うというよりは、アラブ世界の医師・医学者たちのエピソード集とその背景、といった要素が強いように思われる。

 本文自体はアラビア医学のはじまり、その前史から始まるので順序立てて読む事ができる。当時において体系化された医術そのものだけでなく、医師・医学者が具体的にどのように社会とかかわり、治療を行い、その時代を生きていったかが書かれる。
 扱われるのはバルマク家(あのバルマク家である。医術をよくする者も多かった。)やブフト・イシュー家、ジブライールやユーハンナー、あるいは当時のやぶ医者たちなど。特に頁が割かれているのはやはりアル・ラーズィーとイブン・スィーナーである。(著名な医師・医学者がいないのかもしれないが、オスマン・サファヴィー・ムガルの時代の話は出てこない。)

 一方で当時の医学知識の水準などもわかるようになっているので、これを一冊読めばおぼろげながらアラビア医術の歴史全体がわかるようになっている。
 すこぶる面白いのでお勧めの一冊である。
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