光の庭 小説 マニの生涯/アミン・マアルーフ
一時は世界宗教として興隆したマニ教の開祖、マニの生涯を描いた歴史小説。ササン朝時代のイランを舞台とする。
マニ教は、キリスト教・ユダヤ教・ゾロアスター教、仏教などの諸宗教の影響を受け、ササン朝時代に開かれた世界宗教だ。その開祖マニの生涯を追ったのが本書である。
マニ教は今はほとんど途絶えてしまった宗教だからか、割合その教祖に対しても遠慮なく書いているように思える(恐らく、イエスやムハンマドの生涯などを小説にしようと思えば相当気を使わねばなるまい)。もっとも、著者はマニに尊敬を以って接している。
管理人はマニ教に大した知識が無いのだが、本書でのマニ教の性格を貫くのは寛容の精神である。これはレバノン内戦を経験した著者の思いが反映されているのだろうか。
本書ではマニの生い立ちから、ササン朝のシャーハンシャー、シャープール1世と共に歩き、そして袂を分かつ様子、最後に彼の死が描かれる。当時のイランの空気など、一つの解釈として非常に面白い。国際関係も重要であり、パルミラやローマ、そしてエデッサの戦いにも触れられている。
しかしよくこんな本が和訳されたものである。大変面白かった。