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『クルアーン』 語りかけるイスラーム/小杉泰


 『書物誕生』シリーズの一冊。イスラームの聖典クルアーンについての概説書。
 
 西洋におけるキリスト教とはまた違った意味で、歴史上にしろ現代にしろ中近東を論じるにあたってイスラームは不可欠の要素だ。その社会・経済など多くのシステムを規定しているのがイスラームの聖典クルアーンと、預言者言行録ハディースである。
 本書はそのクルアーンをわかりやすく解説した本だ。クルアーンそのものは聖書などと異なり、文学的には大して面白い本ではない。章が時系列順に並んでいるわけでもなく、物語的な脈略があるわけでもない。それを解説するにはやはり著者独自の組み立て方というものがあるのだろうが、本書では前半部をその成立に、後半部を内容に当てており、内容の部分では、章をいくつかのカテゴリに分けて解説している。

 前半部では、ムハンマドの生涯や、いわゆる「ウスマーン版」の成立、書物としてのクルアーンの広がりなどが解説される。「紙」の果たした役割の大きさや、活版印刷とクルアーンの関わりなど、普通はクルアーンの説明で見かけないような問題も扱っている。
 後半部はムハンマドの時代をクルアーンからどう読み解けるかという点や、クルアーンが示す世界観、クルアーンが定めた規定などに頁を割く。一面的な見方ではなく、多様なアプローチで読み解けるのがクルアーンの魅力なのだろうが、その多様なアプローチのいくつかを提示する、という形になっているのである。

 聖典と読者のやりとり、という点に重点を置いた本書は、我々日本人にとって、さっぱりわからない部分があるイスラーム世界の人々の思考を知るのにも役立つ。

 イスラームに関する予備知識はあった方がいいが、それでも非常に分かりやすい本であった。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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