古代遊牧帝国/護雅夫


 本邦唯一の突厥通史。
 
 突厥。スキタイ・匈奴・モンゴルなどに比べてややマイナーではあるが、中央ユーラシアに覇を唱えたトルコ系の巨大遊牧帝国である。現在のトルコ共和国では、トルコ民族国家の建国を突厥国家が成立した552年まで遡らせているという。
 本書はソグド語碑文、突厥文字碑文・漢文史料・ビザンツの欧文史料などを駆使して書き上げた突厥通史である。新書にしてはいささか専門的すぎる議論もあるが、現状で日本語で読める突厥通史はこれしかない。

 狼の子孫を自ら任ずる突厥は柔然から独立し、トゥメンとイステミの兄弟は南北朝時代の混乱する中華やエフタルに圧迫されるササン朝を横目にモンゴル高原から黒海付近までに至る巨大帝国を築き上げた。
 唐の建国と太宗李世民の侵攻により突厥第一可汗国は瓦解するが、新たに可汗として立ったイルテリシュと、戦争も内政もこなす万能の宰相トニュククは唐のくびきからの脱出を試みる。
 そういった突厥本土の流れと、西方の西突厥から突騎施への流れ、そして突厥帝国で活躍したソグド人たちの実態などを順序立てて書く。

 唐にしろササン朝にしろこの時代の大国の動向を左右してきた突厥は、しかしこれまでそれに見合った評価をされてきたとは言いがたい。本書以降、突厥をメインに扱った一般書が出ていないのもその証左と言えるか。
 ともあれ、少々古くとも突厥について知るにはこの本を読むしかない。読み込めれば面白いし、学者どうしのアレコレも少し記述があってなんとなくニヤニヤしてしまう。絶版ではあるが、割合古本で出回っているだろうと思うので遊牧民に興味のある方は読んでみてはどうか。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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