原理主義の潮流/横田貴之


 副題は「ムスリム同胞団」。リブレット「イスラームを知る」シリーズの一冊。
 
 ムスリム同胞団と言えば2011年のエジプト革命以降、報道でよく耳にしたり目にしたりするようになった名前であるが、その実態と歴史についてはあまり知られていない。世俗主義ではなく、またテロに走る過激派ではないイスラーム主義者たち、すなわち「中道派」がどのような経緯でどのような活動を行なっているのか、その実態を解説する良書である。

 「原理主義」とタイトルにあるだけにアル・カイーダやラシュカレ・トイバ、ジェマー・イスラミアといった過激派集団について書いてある本かと思って手に取れば期待を裏切られることになるだろうが、ムスリム同胞団は昨今の時勢において重要な組織であるだけに、一読して損はない。
 同胞団は中東各地に支部を持ち(パレスチナのハマスもその派生団体である)、大衆運動(テロではなく)をその改革のための手段とするため、影響力の非常に大きな組織である。しかしそうであるがゆえに時の政府からは危険視され、非合法期間が長く続いた。この点、ナセルらを英雄視しているだけでは見えてこない部分である。

 内容としては同胞団の誕生からエジプト政府との関係の中での歴史、ハサン・バンナー、サイイド・クトゥブの思想、そしてパレスチナのイスラーム主義運動、ハマスの解説となっている。
 エジプト国外の活動についてはほとんどハマスの記述のみしかないのだが、リブレットのページ数ではこれが限界か。ハマスについてはファタハを穏健派、ハマスを過激派と竹で割ったような評価はできないであろうことが読み取れる。

 この手の問題は植民地主義の歴史に加え、宗教問題が絡む。ために一度も植民地化されたことがなく、また宗教的にはいい加減な日本人には理解しづらい。が、今後中東がどう動いていくかを考え、それに対応する意味でも知らねばならないことだろう。
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