ゾロアスター教/青木健


 ゾロアスター教の概説書。
 
 同じ著者の『マニ教』が面白かったので手にとってみた。

 ゾロアスター教というと日本ではあまり馴染みがないが、一応現存している宗教である。アラブに征服される以前はサーサーン朝の国教であった。本書は、前史を含めてゾロアスター教(+古代アーリア人の諸宗教)について解説した本である。
 ある種革命的な宗教家であったザラスシュトラ・スピターマは、それまでのアーリア人の諸宗教をひっくり返し、自ら創りだしたアフラ・マズダーのみを唯一信仰に値する神とした。その後揺り戻しで他宗教との折り合いをつけるためにそれまでの神々が復活したりするのだが、そのあたりのくだりは全く知らなかったので勉強になった。

 また、古代アーリア人の諸宗教に関連して、クルド人のヤズィード教という宗教が出てくるのだが、これはもともとイスラームのスーフィー教団として発足したものが、古代クルド人の宗教によって換骨奪胎されてクルド人の民族宗教としての色彩を帯びていったものだそうである。その事実も面白いが、そういう現象が起きるということ自体がまた興味深い。

 最後は「ヨーロッパにおけるゾロアスター幻想」と題して欧州でゾロアスター像に尾ひれがつくどころか全く別のものになってしまう過程が説明されているのだが、これも色々と驚くことが多い。ゾロアスターの名前を西欧に伝えたのはビザンツ帝国の学者でプラトン哲学の大家であったゲミストス・プレトンなのだが、彼によればゾロアスターとは「バビロニアの占星術の大家、プラトン主義哲学の祖、キリスト教の先駆者、マギの魔術の実践者」という人物であることになるらしい。
 ここから、ルネサンス期の「東方の賢人」ゾロアスター像が出来上がったそうだ。

 ゾロアスター教そのものだけでなく、関連する諸々についての記述も多い。それにキリスト教やイスラームを知るためにもその先駆者であったゾロアスター教について知っておいても損はないのではないか。おすすめの一冊。
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鉄勒京二

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