アーリア人/青木健


 誤解を招きそうなタイトルだが、イラン系アーリア人遊牧民・定住民を列伝形式で紹介した書籍。
 
 恥ずかしいことに最初に本屋で見かけた時はタイトルだけ見て通り過ぎてしまったのだが、著者がゾロアスター教研究者の青木先生ということで手にとってみた。

 扱われるのはスキタイ人、ペルシア人、パルティア人、アラン人あたりの有名どころからホラズム人やバクトリア人、ホータン・サカ人などのマイナーどころまで。こんな史料の言語も文字もバラバラで時代も2000年に渡るような「イラン系アーリア人」という対象をよく一人の著者が書いたものだと思う。実際、著者の専門外のところでは詰めが甘いという評もあるようだが、それにしてもこの大それた試みをそれなりに成功させているのは恐ろしい(より正しいことが知りたい場合は巻末の参考文献リストを活用しよう)。

 唐の建国の功臣の尉遅敬徳がホータン・サカ人の血筋らしいという話や、イラン系アーリア人の定住民研究に当たって、「例えるなら、古代日本研究に当って、ギリシア文字表記の九州弁で書かれた『古事記』、ラテン文字表記の関西弁で書かれた『日本書紀』、キリル文字表記の関東弁で書かれた『万葉集』、アラビア文字表記の東北弁で書かれた『源氏物語』などしか資料がない」ような状況になっていること、アーサー王伝説がアラン人の伝承の影響を受けている可能性があることなど、面白い薀蓄も多い。

 これ一冊で済ませてしまうには少し問題がありそうだが、入門用にはいい書籍である。
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鉄勒京二

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