ドイツ史と戦争


 近代ドイツ「戦争史」論集。
 「戦争史」とは単なる「軍事史」ではなく、戦争を社会との関わりの中で捉える史学分野だそうだ。すなわち、社会の変化にともなう戦争の変化、戦争による社会の変化の把握を試みるのである。

 構成は4部13章からなっており、まず、第一部でドイツ統一戦争(デンマーク戦争・普墺戦争・普仏戦争)から冷戦期までのドイツ史と戦争についての概説がなされる。
 正直に言うと管理人は近代ドイツ史などはほぼまったくの専門外なので、この部分が無ければ以降に歯が立たなかったと思う。手引きとして非常にありがたかった。

 以降は各論である。
 次の第二部は戦争史と思想を扱う。素人感想であるが、クラウゼヴィッツの影響が大きいことを思い知らされる。
 大モルトケとシュリーフェンを扱った第五章でモルトケにやや厳しい評価が下されているのが印象に残る。政府と軍隊だけが動く「官房戦争」から、国家全体を戦争の遂行へと傾ける「国民戦争」への転換期にあって、モルトケは困惑していたのかもしれない。
 第三部ではドイツの陸海空軍の組織がいかに作られたかが述べられ、またドイツとイギリスの英独建艦競争に一章が割かれている。
 特に、軍事と政治の関わり合いという点では建艦競争が興味深い。国内政治勢力の角逐、外交上の思惑などが軍事の方針に大きな影響を及ぼしうる具体例である。
 最後の第四部はドイツ軍の世界的影響と題して、日本、オスマン帝国、中華民国の各国にお雇い外国人として派遣されたドイツ軍人が現地でどのような影響を与えたかが考察される。
 オスマン帝国近代史は管理人が最近注目している部分だが、第十二章はコルマール・フォン・デア・ゴルツがオスマン帝国陸軍の改革において果たした役割が詳述されており、個人的にはこれが一番の収穫であった。
 また、ファルケンハウゼンが本国の意向に反して中華民国に協力し続けようとした事実は、驚いて読んだ。
 
 ネット上で「目新しいものはない」という評も見かけたが、管理人にとってはほぼ完全に専門外なので大変参考になった。先述の通り第一部は概説に充てられているので、入門書としてもお薦めである。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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