東アジアの兵器革命/久芳崇


 日本の火縄銃が東アジアの歴史に与えた影響を考察した書籍。
 
 普段中国史・日本史は扱わないことにしているのだが、交流史の側面もあるので紹介しておく。
 
 長篠の戦いで信長が鉄砲の三段撃ちを用いて武田軍を破った、というのは有名な話である一方、最近ではその三段打ちの真偽について議論がある。ところが、中国では文禄・慶長の役の際に朝鮮救援に赴いた明朝軍が、日本の輪番射撃に手を焼いたという史料がるそうだ。
 冒頭部はそのような話からはいっていき、第一部が中国に渡った日本式鉄砲と日本兵、第二部が明末における兵器革命、となっている。どちらかと言えば中国史寄りの内容だ。

 日本兵が中国の武将の麾下に入って中国内の叛乱の鎮圧に動員されたり、北辺で対モンゴル・対女真の防衛に当てられたり(この時期の明には日本人だけではなく、様々な民族集団を抱え込んで私兵(家丁)とする武将が多かったという)と、日本史だけに注目していては見えてこない日本人の活躍が面白い。
 明朝期の外来火器受容は、前線で個別にされたようで、明の政府が主導して大規模に導入しようとしなかった、という点も興味深い。ただ、オスマン帝国式の嚕蜜(ルーミー)銃(日本式の火縄銃より一回り大きく、銃架が必要ではあるが破壊力も高かった)を、対日本戦で苦戦した明朝が意図的に導入しようとした事実もあるらしい。
 他にも日本兵捕虜の扱いについて(格好が付かないので捕虜の階級が意図的に引き上げられている)や、日本兵を含む多民族の家丁を率いて各地を転戦した劉綎の事績など、興味深い話題が多い。

 ただ、前半部は推論が多いように見受けられたので、これから論が補強されたり反論が出されたりする可能性も高いだろう。今後の動向にも注目である。

 しかし200頁強で税抜3800円というのはいささか財布に痛かった……。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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