図説プロイセンの歴史/セバスチァン・ハフナー


 副題は「伝説からの解放」
 結論から言うと面白かった。
 概説史本としては著者の主張が前面に出過ぎているし、研究書にしては叙情的すぎる。史談だと思って読みかかるのがいいだろうと思う。

 内容は、結局ドイツのナショナリズムと反ナショナリズムによって作られたプロイセン像は、両史観ともに伝説にすぎず、本来のプロイセンとはもっと別のものである、との主張に終始していた。
 まあ、序盤のキリスト教擁護が少々鼻につくものの、エネルギッシュな文体はそれでいてなかなか読みやすかったように思う。ただ、出来事を出来事の名前でなく年号で書いてあるところがあるので、門外漢が把握に手間取るところもあるかもしれない。まあ、それはドイツ人が書いているのだから仕方あるまいが。

 もはやプロイセンは過去の物となり、完全に客観視出来うるからこそ、過去のプロイセン像からの脱却を目指し、新たな視点で捉え直す、という試みのもとでのサブタイトルなのだろう。しかし、著者自身がプロイセンに並々ならぬ思い入れを抱いているのが感じられる以上、「(「プロイセンはプロイセンたることを是とし続けた」という史観を示した)この本自身が新しい現実味を帯びた『プロイセン伝説』になる可能性もある」と監訳者が紹介している指摘の示唆の通りだと考える。
 だからこそ面白い、とも個人的には思っている。

 話が逸れるが気付いたこととしては、セバスチァンの描くプロイセンと、個人的に学んできたオスマン帝国像に奇妙な共通点があるのだ。多民族を抱え込んだ上での宗教的寛容性、先駆的かつ強大な常備陸軍、宿命的な征服戦争、ナショナリズムの台頭によって消えていったこと、その消滅後に何かと軍国のイメージが取り上げられて悪し様に扱われること……。まあ、しっかりと比較できるだけのオスマン帝国とプロイセンに関する知識量がないのが残念なのだが。
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鉄勒京二

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