ハプスブルクをつくった男/菊池良生


 14世紀ハプスブルク家のオーストリア公、ルドルフ4世の評伝。
 
 まあ、なんというべきか。菊池先生自らそう書いているが趣味に走った本という感が強い。こう言ってしまってはなんだが例え贔屓目で見ても新書で評伝を出すような有名な人物ではない。
 ルドルフ4世は「建設公」と呼ばれる。在位わずか7年、破天荒なまでの活動でハプスブルクの青写真を描いた人物と言えようか。とてものこと、基礎を作るところまで行ったとは思えない。

 本書は、ルクセンブルク家、ハプスブルク家、ヴィッテルスバッハ家の三つ巴から筆を起こして背景を説明した後、ルドルフの足跡をたどる(ただしこれが曲者で、時系列順ではない)。一文一文は読みやすいが、著者の筆が空回りしている部分も見受けられ、人物も油断していると新しい名前が出てくるのでいささか読むのにくたびれた。
 それはさておき、読み込めさえすればルドルフ4世とカール4世(どちらかというとカールの方が有名だと思うが)の関係や、この時代の神聖ローマ帝国の状況など、見えてくるものは多い。個人的に印象に残ったのは「傑物皇帝」と書かれている男、「つなぎ」でありながら30年以上に渡って皇帝として在位していたヴィッテルスバッハ家のルートヴィヒ4世である。
 うわついた話は出てこない。戦争と政治の「歴史」が書かれている点、評価したい。

 しかし興味があったので巻末の参考資料を見てみたが、重要な文献は大半が欧語文献で、仕方がないとは言え困ってしまった……。
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