私もできる西洋史研究/井上浩一


 ビザンツ帝国史の研究で有名な井上浩一先生の西洋史研究入門。
 
 狙いがよくわからないというか見えにくい本ではある。
 西洋史学科という場所では四年間でどんなことを学んでいるのか、初年次セミナーから講義、演習、卒論まで、それを紙上で再現する形式となっている。そのため、歴史学研究の入門書ではあるが歴史の概説書ではない。井上先生の専門はビザンツ史なので聖テオドシア教会についてなど、ビザンツ史に関する知識が得られる部分も多いがそれはあくまで副次的なものだろう。
 分からないのは対象としている読者で、ミーハーな歴史ファンは(個人的には読んで欲しいが)読まない可能性が高く、一方史学科の人にはあまり必要ないだろう。つまるところ「歴史」だけではなくて「歴史学」に興味のある素人(このブログの管理人のような)に向けて書かれた本なのだろうが、そういう層がどれだけいるのかは少し疑問である。歴史学の方法論や史料の読み方などについて有用な文章もあるが、対象が分からないので少々もったいない本だ。
 値段は手頃なので「史学科の学生というのはどんなことをしているのだろう」という興味がある人は手にとってみればいいのではないか。

 ちなみに「仮想大学」HPで本書に収録されている講義の講義映像が無料公開されている。これは面白いのでビザンツ史に興味のある方は是非一度観てもらいたい。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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