オスマン帝国史の諸相


 オスマン帝国史の論集。
 専門性の高い論文が多く収録されている。
 
 個人的な話をすると、図書館に本書が並ぶまで待ってから借りても良かったのだが、多分そうなるといつでも読めると思って結局読まないだろうと思ったので買った本である。案の定、6300円という値段が頭になければスルーしていたであろうと思われる論文もちらほらあった。買った以上、全て目を通さなければもったいないので通読したが、個人的な関心からズレる部分もあっていささかくたびれた……。

 それはさておき、本書はオスマン帝国史に関する種々のテーマを扱った論集である。鈴木董教授が退館なさるとのことで、おそらくその関係で出版されたのだろう。全て各論なので、とっつきにくい部分もあるが、日本におけるオスマン帝国史研究の最前線を知るにあたってこれ以上ない形の論集だ。章立ては最後につけておくので、興味のある論文があれば買わずにその部分だけ図書館で読むのもいいだろう(先に書いたように管理人は買わないと読まないので買ったが)。
 面白かったのは「近代オスマン帝国の外交網の拡大過程」、「穀物問題に見るオスマン朝と地中海世界」、「一八〇二年ワラキア・モルドヴァ公宛て勅令の意義について」、「オスマン朝「軍人法官」の実像」、「非ムスリムのオスマン官界への参入」、「トルコ正教会独立運動とトルコ人意識」、「現代トルコの民族主裁者行動党(MHP)とイスラーム」あたりか。
 数が多いのでいちいち内容は紹介しないが、最盛期と言われていた16世紀より後の時代を扱ったものが多く、最近の研究動向が分かる(MHPについては共和国時代の政党なのでオスマン帝国と直接の関係は無いが)。

 ただオスマン帝国史、就中16世紀より後に関しては概説書を数冊齧っただけの身としては歯が立ちにくい部分も多かったので、知識を身に着けてから再度挑戦したいと思う。


章立て
鈴木董「本邦におけるオスマン史研究史私観」
第Ⅰ部 国際関係と交易
鈴木董「近代オスマン帝国の外交網の拡大過程」
堀井優「ヴェネツィア人領事が見たエジプトとその周辺」
鴨野洋一郎「オスマン帝国におけるフィレンツ絹織物および毛織物の販売」
澤井一彰「穀物問題に見るオスマン朝と地中海世界」
松井真子「オスマン帝国の「条約の書」にみる最恵国条項」
黛秋津「一八〇二年ワラキア・モルドヴァ公宛て勅令の意義について」

第Ⅱ部 前近代のオスマン帝国
小笠原弘幸「オスマン王統譜における始祖たちの変容」
高松洋一「十八世紀後半オスマン朝の官僚機構における情報共有」
清水保尚「オスマン朝の財政機構」
齋藤久美子「部族から県へ」
松尾有里子「オスマン朝「軍人法官」の実像」

第Ⅲ部 帝国の西洋化改革から国民国家形成へ
秋葉淳「オスマン帝国の制定法裁判所制度」
大河原知樹「オスマン帝国の税制近代化と資産税」
長谷部圭彦「オスマン帝国における「公教育」と非ムスリム」
上野雅由樹「非ムスリムのオスマン官界への参入」
石丸由美「トルコ正教会独立運動とトルコ人意識」
宮下(関口)陽子「現代トルコの民族主裁者行動党(MHP)とイスラーム」
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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