聖なる家族/森本一夫


 副題は「ムハンマド一族」。リブレット「イスラームを知る」シリーズの一冊。
 
 ムハンマドに連なる血統を持つとされる人々というのは、ムスリムが住んでいる国であれば大概いるという。本書は、「サイイド」や「シャリーフ」と呼ばれるムハンマド一族(時と場合によっては系譜をどこまで遡った人の子孫がその「一族」なのか伸縮するが)について、その歴史的変遷から現代の彼らに関する事柄までを解説した書籍である。

 そも、「ムハンマド一族」とは何ぞや、という解説から入り、その歴史、彼らが人々からどうみなされてきたか、そして何故いたるところに彼らは存在するのか、これらを順序立てて述べている。
 印象に残るのは著者の語り口の上手さで、今管理人の手元には「イスラームを知る」シリーズの既刊11冊のうち7冊があるが、その中で一番読みやすく、頭を使わなくとも面白い。著者の現地での体験も交えて書かれており、例えば著者が「俺もムハンマド一族に」などと(どういうことかは本書を読むべし)おもしろがっている様子など、思わずニヤリとしてしまう場面もある。
 ナギーブ制度(ムハンマド一族のうちアリー一族の長を任じてムハンマド一族に関わる仕事を任せる制度)の解説やアッバース朝革命時の「お家の人々」という言葉の解釈のロジックなど、歴史的に興味深い話題も多い。

 とりあえずシリーズを揃えるつもりで読んだ一冊だったが、いい買い物だったと思う。
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鉄勒京二

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