古代オリエントの宗教/青木健


 青木健先生の古代オリエント宗教史。
 
 タイトルからするとバアル信仰やアメン信仰なども入ってもよさそうなものだが、流石にそこまで手を広げると収集がつかなくなるのか、本書で扱われているのはキリスト教の登場以降である。旧約聖書と新約聖書のセットが出そろうことによって強力な浸透力でもって進出するアブラハム系一神教「聖書ストーリー」の広がりに対して、東方オリエントの「異教」がいかなる対応を取ったのか、すなわち徹底的に反撃しようとしなとか、何もしないまま消えてしまったのか、一神教の中で何らかのかたちで生き残ったのか……などを時代順に解説する方法を取っている。
 青木先生の専門範囲やこれまでの著作からすると、通観するにもちょうどいい区切りと軸の通し方だったように思う。

 扱われるのはマンダ教、ゾロアスター教ズルヴァーン主義、ミトラ信仰、イスラームにおけるグノーシス主義、ゾロアスター教がイスラームに相対して「聖書ストーリー」に吸収される過程である。それぞれの簡単な解説と、「聖書ストーリー」の進出に対するリアクション(あるいはノーアクション)が過不足なく説明されている。新書という体裁にちょうど良い分量で、一章ごともそれほど長くなく読みやすく初心者にもおすすめできる(例によって著者の専門であるゾロアスター教とイラン・イスラーム思想以外に関しての正確性は留保が必要かもしれないが)。

 しかしこの東方の思想史上のカオスな状況は面白い。本書を読んで気になれば同じ著者の『マニ教』『ゾロアスター教』も読んでみるといいだろう。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ