モンゴル軍のイギリス人使節/ガブリエル・ローナイ


 副題は「キリスト教世界を売った男」。
 モンゴルの欧州侵攻にあたって、その先導を行ったイギリス人、その生涯を追う。
 
 そのイギリス人は、ジョン王に対するマグナ・カルタの動乱で破門された上にイギリスを追放され、免罪を求めるために1218年の十字軍に参加、ここでも悶着起こして帰るに帰れず中東を放浪していたところをモンゴルの間諜にスカウトされ、カラコルムまで行って語学能力を生かしてしばらく働いてたところ、バトゥ征西に付き合わされることとなり、ベーラ4世のもとに降伏勧告を告げるため赴くなどして、最終的にオーストリアの街で捕えられて殺された、という人らしい。
 副題とは裏腹に著者は彼もまた時代の犠牲者だったとしている。

 当のイギリス人については史料があまりないようで、消去法を用いて、彼の足跡と推測される道をたどりながら当時の世相や背景事情などが語られる。ジョン王がイスラームへ改宗することを条件にムワッヒド朝の王に援助を求めたが断られた事件や、マグナ・カルタの動乱、1218年の十字軍、耶律楚材の働き、バトゥ征西など13世紀のユーラシアの状況を、この本を一冊読むだけで様々な断面から見ることができる。
 原書は78年、訳書が95年で例によってモンゴル蔑視が目に付くが、さはさりながら利用できる種々の史料をできる限り利用しているのが読み取れ、また面白い話題が多いのでこの時代のユーラシア史に興味のある方にはおすすめである。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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