東ゴート興亡史/松谷健二


 副題は「東西ローマのはざまにて」
 ゲルマン民族の大移動、その一幕をつぶさに、かつ分かりやすく描写した傑作だが、これもまあ概説史というよりは「史談」の類であろう。
 著者は、欄外の事件といっても当事者の生き様死に様のすさまじさは歴史的大事件の場合と何ら変わらないとあとがきで述べている。読んで実感したが、その通りだと思う。
 そもそもこの時代の西洋史に興味のない人で、東ゴートがイタリアに王国を建てたことを覚えている人がどれくらいいるだろうか? ましてやそこで東ゴート族の最盛期を築き上げ、被支配民のローマ人からもそう嫌われず善政を敷いた王がいたことなど殆どの人は知るまい。王の名をテオドリックと言う。しばしば「大王」と呼ばれる男である。
 彼の生涯がこの文章のハイライトとなっており、それまでの東ゴート族の紆余曲折を経た移動も逐一説明されている。一時期東ゴート族はフン族の下にいたこともあるので、その関わりとしてアッティラの詳しい描写があったのが個人的に嬉しかった。また、テオドリックの前にイタリアで覇権を握ったオドアケルもなかなかに魅力的な人物である。

 この時代のローマ史や塩野女史のローマ人の物語が好きな人も、ローマの外からの視点でこの時代を見られるのはなかなか楽しいのではなかろうか。

 同じ著者のヴァンダル興亡史とカルタゴ興亡史も読みたいと思っているところだ。

章立て

はじめに
一 民族大移動の時代
二 イタリアの東ゴート王国
三 テオデリックの晩年と死
四 ユスティニアヌス一世とその世界
五 破滅への道(その一)
六 破滅への道(その二)
おわりに

 しかしどうも日本人には「蛮族」と呼ばれる様な人々を擁護したがる傾向があるような気がするのだが、これはどういうことだろうか?(まあ、単に自分が「蛮族」贔屓なのでそう感じるのかも知れないが)
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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