朝鮮儒教の二千年/姜在彦
儒教を軸に据えた朝鮮通史。
朝鮮科挙について調べるために読んだのだが、思いの外面白かった。タイトルからではわかりにくいが、先にも書いた通り儒教関連の事柄を中心に置いて朝鮮半島の通史を概観しているという面が強い。なので、朝鮮史の予備知識が無くともある程度は読めるだろう。著者は韓国出身ではあるが京大出の方だそうだ。
オーソドックスな通史かというと必ずしもそうではない。対清北伐論を、韓国の学会で言われているような「朝鮮の自主」ではなく「崇明事大主義」に過ぎないとし、清に学ぼうとする「北学」こそ「自主」であるとしたり、士林派を実質論の伴わない議論ばかりして党争に明け暮れていたと喝破するなど、なかなか刺激的な内容である。
一方で、主流派にはなれなかったものの積極的に現実を見つめていこうとした人々(北学派など)にも光を当て、かなりの頁を割いている。
元や清に対する「人種的偏見」について批判しているのも特徴である。
個人的に調べていた朝鮮科挙についても、その前史である新羅時代の読書三品科から始まり、かなり詳しい解説がなされている。また科挙制度のシステムそのもののみならず、その運用における問題点なども指摘されており、党派争いや科学技術の停滞などにも科挙システムが関わっていたと論じている。
儒教に興味のある方や、朝鮮史の初学者にもおすすめしたい一冊である。