近況と最近読んだ本など

P2012_0806_222930.jpg
 どうも、管理人です。テスト終了と夏休み突入につき更新ペースを上げていきたいと思います(多分単位は問題ない……はず)。
 写真はうちの洋書類ですが、マクリーズィーのエジプト史の英訳(真ん中のA History of~。アイユーブ朝分だけですが)を手に入れたのでぼちぼち訳していきたいと思います。特に完史の記述は1231年で終わっているのでそれ以降は役立ってもらうことになりそうな予感。

 以下、最近読んだ本でレビューは書かない予定のものなど。

■小島毅『東アジアの儒教と礼』
 最近の流れで、科挙とか儒教とか唐宋変革論とかに興味が出ているので一度知識を整理する意味で読んだ概説書。期待通り割とオーソドックスで良かったと思います。欲を言えばもっとベトナムの記述が欲しかったですが……(日本・朝鮮にはそれなりに触れられてる)。
 朱子学と陽明学って単純に対立するもんじゃないんですねえ。


■大塚和夫『イスラーム主義とは何か』
 羽田正先生が『イスラーム世界の創造』の中で「イスラーム主義についてはこの本読んでね」とおっしゃってたので読んだ本。
 イスラーム主義の概説書で、著者は中東民族誌学、社会人類学の専門家ですが、歴史的経緯についてもがっつり書いてあって(というか避けて説明することはできないんでしょうが)、なかなかおもしろい本です。
 以前レビューした『原理主義の潮流』とあわせて読むとより理解が深まるかもしれません。
 スーダンの「国民イスラーム戦線」通称「ジャブハ」がムスリム同胞団系の組織(そしてジャブハとは別に同胞団直系の組織もスーダンにあるらしい)だというのも初めて知りました。


■荒このみ『マルコムX 人権への戦い』
 キング牧師ほど日本での知名度は有名ではないでしょうが、キングと同時期に活躍したムスリムの黒人運動指導者、マルコムXという人物がいます。彼の評伝。
 何かAmazonでの評価があまり高くないようですが、管理人は面白く読みました。確かに必ずしも時系列順ではないので脈略のわかりにくいところもありますが、一人の人間を把握するための形式としては必ずしも悪い文章だとは思いません。著者の「クセ」みたいなものでしょう、なまじ一文一文は平易なだけにわかりづらいという印象を与えるのかもしれませんが。
 まあ、ムスリムだということで前々からマルコムXのことは気になってたんですが、とりあえず最初に読んだのがこれだったというのは、まあハズレではなかったかな、という印象です。生い立ちから暗殺まで、ひと通り追ってありますし、彼の思想の変遷も把握できます。特にメッカ巡礼でのナショナリズムからトランスナショナリズムへの変化、つまり人種的な隔たりを彼の思想が越えるところはイスラームに魅力を感じてきた者としては感慨ひとしお。
 何度も強調されてますが、マルコムXは決して「(キングの非暴力主義とは違って)暴力主義を推し進めた」人間ではない、ということが強調されているのは記憶しておくべきでしょう。副題にもある通り、彼が求めたのは公民権ではなくて人権だったのだ、という見方も少なくとも本書内での筋は通っていてわかりやすかったと思います。
 まあ一冊だけ読んでどうこう言うのもなんなので評判のいい現代新書の『キング牧師とマルコムX』も読もうかと思います。宿題。


■ヤコブ・M・ラブキン『イスラエルとは何か』
 そもそもシオニズムとは反ユダヤ教的である、という刺激的な内容のイスラエル糾弾の書(これが「刺激的な内容」になってしまって、世界の常識ではないあたり、彼らの苦労があるんでしょうが。本来ならば常識であらねばならない)。
 以前出版された『トーラーの名において シオニズムに対するユダヤ教の抵抗の歴史』を要約した上で新章を付け足したものです。各国語に訳される予定はあるようですが、まだ日本語訳しか出ていないので本書の4割ほどは今のところ日本語でしか読めない内容とのこと。
 ラブキンの主張によれば、宗教言語であったヘブライ語の日常言語化は逆説的に「日常の宗教化」ではなく「ヘブライ語の世俗化」をひきおこし、これまたナショナリズムの道具と化してしまった。多くのラビたちはこれを冒涜だとして激しく憤った、と。
 またラブキン曰く、イスラエルのユダヤ人たちは宗教的アイデンティティをもはや奪われてしまっている。彼らに与えられたのは言語と土地の、ナショナリズム・アイデンティティであって、彼らはそのアイデンティティによっていわばイスラエルに囚われている状況なのだ。宗教的アイデンティティを確固として持っているユダヤ人ならば、(本文中の言葉だが)「どこに居を移したとしても、シナゴーグを見つけ、ユダヤ教系の学校をみつけ、カシェールの(ユダヤ教の食餌規定に適った)パン屋を見つけながら、立派に定住できる」のである。
 ともかく宗教的な問題から世俗的なあれこれまで徹底してイスラエルを批判しています。
 まあ内容の一部を紹介はしてみたもののこの当否については判断できるだけの材料を管理人は持ちあわせていないのでありました(恐らく妥当であろうとは思っている。印象論ですが)。ただ、本人がユダヤ教徒であり、反イスラエルの立場を取っている以上、反イスラエルのユダヤ教徒がいる、というのはこの本そのものがその証明になっています。イスラエル=ユダヤ教国家と思っている人は一読をば。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ