北・東北アジア地域交流史/姫田光義[編]


 ユーラシア東北部を中心とした交流史の各論概説集。
 歴史学において一国史観を越えようとする潮流が生まれて久しい。本書は、地域交流史の各論を1冊にまとめた論集である。ただ、初学者向けとは言いがたく、有斐閣のカテゴライズでは一番易しいInterestになっており、これに関してはどうかと思うのだが……。
 執筆陣は日本史・中国史・モンゴル史などから、歴史学ではなく地域研究を専門としている方まで幅広い。かなりレベルの高い本だと思うが、これが税抜2000円で買えるのは大変ありがたいと思う。

 内容は第一部「シベリアの先住民族と環オホーツク海・環日本海交流圏」、第二部「沿アムール河・沿ウスリー江交流圏の形成と現代」、第三部「モンゴルと中央アジアの交流圏の形成と現代」、第四部「文化の移動と交流圏をつなぐリンク」となっている。

 特に面白かったのは第一部で、日本は決してユーラシアの孤島ではないことが分かる。「鎖国」時代にも日本は「四つの口」、すなわち長崎の他にも、薩摩(対琉球)、対馬(対朝鮮)、松前(対蝦夷地)で世界と関わっていたという。琉球や朝鮮はもちろん、蝦夷地も日本とだけ交流があったわけではなく、それぞれの地域システムの中で周辺世界と交流があったわけである。
 また日本史ではあまり見ないサハリン島や北海道の状況が分かるのも面白い。個人的には交易を通じて精強を誇った津軽安東氏がやはり気になるところである。

 第二部以降もロシア=コリアンの歴史や海の神さまを祀る文化の広がり方など、普通の概説では見かけないような話題が多く、色々と参考になる。

 世界史好きの人にはもちろん勧められるが、交流史を通じて日本史好きの人が世界史に関心を持つにも丁度いい本なのではないだろうか。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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