砂漠と文明/嶋田義仁


 副題「アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明論」。アフリカを研究してきた著者が、長年のフィールドワークをもとに新たな文明史観を提示した論考。
 
 以前紹介したが、梅棹忠夫『文明の生態史観』という本がある。ユーラシアの環境的な構造を明らかにして、それが文明の形成や発展にどのように関わってきたかを論じたものだ。本書『砂漠と文明』は、その視点をユーラシア及びアフリカ全土に広げ、旧大陸全体を視野に収めて新たな「人類文明史観」を提起したものである。
 単なる誤植なのかそうでないかは分からないのだが、著者の専門外と思しき箇所にところどころ妙な記述がある(「インドのウマイヤ帝国」、「カール・マルテルの800年戴冠」など。「ムファンマド」は明らかに単なるミスだと思うが)。また、視点がイスラーム文明圏(というものを設定したとして)に偏っていないかという疑問もある。
 しかし、それはそれとしてもユーラシアからアフリカまでを貫く乾燥地帯を軸とし、さらに家畜文化のパワー(輸送力・軍事力・財産としての価値)をキーとして、文明形成のあり方を考えていく論旨には説得力がある。重要な概念はそれを表す図表が付されていて、理解の助けになる。

 前半部は著者の精神的自伝めいている記述がこの文明論の前提と一緒に語られたり、その後も思い出話がちょくちょく出てきたりするので、やや雑然としてはいるものの、読み物としては読みやすくなっている。
 アフリカ史は本書の直接のテーマではないが、その面白さが伝わってくる部分もあり(事実に反する「暗黒大陸」のイメージが何故形成されたのか、という説明には大いに納得するところがあった)、これも収穫であった。

 本書を読むにあたって、先に読んでおく方がいいのはやはり梅棹『文明の生態史観』だろう(他にも、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』、杉山正明『遊牧民から見た世界史』、小杉泰『イスラーム 文明と国家の形成』あたりを予め読んでおくとわかりやすい)。
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