古代地中海世界の歴史/本村凌二・中村るい
古代地中海世界史の概説通史。放送大学のテキストを文庫化して加筆修正したものとのこと。
もともと概説の教科書なので、極端な記述も無く、著者の専門柄ややローマ史の記述は多いもののバランスが良く(逆に言えば細かい所はともかく全体を通して見た時のメリハリが少ないが)通史を解説してある本である。不満と言えば、せいぜい地中海世界といいながらカルタゴ・北アフリカの記述がやや少ないことくらいで、メソポタミア、エジプトの記述も十分な割合である。
章立てなどもオーソドックスなスタイルを取っているが、あえて特徴を挙げるとすれば薄さと情報の圧縮率で、全体の概要を過不足なくまとめ、なおかつ読みやすい記述になっていることだろうか。予備知識が少なくともすぐ読めるので、初心者にはすこぶるおすすめである。
全十五章中三章が美術史に割かれているので、全体的な通史の中の美術史というものも見ることができる。
「地中海世界」という枠組みでの各論集と言えば地中海世界史シリーズ