近況と最近読んだ本など

 ちょっと風邪気味で体調崩してましたが、幸い休日が続いたのでだいたい回復したようです(ただ鼻づまりは相変わらず)。
 外に出るわけにもいかないので綿入れにくるまりながらタバリーの列伝訳してましたが、どうもラーズィーと同時代の人で、バグダードにいたらしいので接触した可能性もなきにしもあらず?
 タバリーは多分野に手を出していた学者ですが、法学者としてはムジュタヒド(イジュティハード資格者)で、マーワルディーの『統治の諸規則』によれば女性がカーディー(裁判官)になれる等の独自の理論を展開したようです。もっとも、彼の後継者はあんまり振るわなかった模様。
 実際、どっちかというと歴史家として有名ですね。

 それと、吉川弘文館の「動乱の東国史」シリーズの第4巻、『南北朝内乱と東国』が少し前に発売されていたので今日買って来ました。近いうちに読みます。
 ついでにキャンペーンの景品をジュンク堂でレシートと交換してもらいましたが、バッグが思いの外頑丈なので重宝しそうです。

以下最近読んだ本。
 


■仁木英之『我ニ救国ノ策アリ 佐久間象山向天記』
 幕末はあんまり興味が無いんですが、贔屓にしてる作家さんの本ということで購入。
 佐久間象山という名前はもちろん聞いたことがあるものの、あんまり何をした人かわかってないまま読み始めました。一代記で死ぬまで書ききっているものの、脇役でありながら有名人である人たち(吉田松陰とか勝海舟とか)の描写も含め、若干駆け足かなあという印象が。
 ではあるものの、『海遊記』然り、頑固者ないし我が強いというか、そういう主人公を書くのは仁木先生の得意とするところの一つだと思うんですが、本書の佐久間象山も清々しいまでに一徹の人で、ストレスフルな社会の中ではコレを読むとスカッとするなあとw


■玉居子精宏『大川周明 アジア独立の夢』
 「日本軍は作戦第一主義でアジアの独立はただの建前だったけど、大川塾の塾生たちは本当にアジア独立の理想を信じてたんだよ」という本。議論の是非については置きますが(というか是非を論じられるほど二次大戦に詳しくない)、知らないことが多かったので興味を持つには最適の本でした。
 内容としては大川塾の内情にはじまり、マレー作戦で塾生が果たした役割、各地域(ビルマ、仏印(ベトナム・カンボジア)、インド)での独立運動との関わり、そしてまとめという風になっています。
 取材対象への思い入れがどうしても強い書き方になってまして(パッと見中立でありながら偏ってる本よりよほど好感は持てますが)、その点ちょっと突き放して見る必要はあるかなあなどと。でも面白かったのは面白かったと思います。


■水谷周『イスラームの善と悪』
 イスラーム的な道徳について語った本。
 第一部の徳目論は、美徳や悪徳を項目ごとに分けてイスラーム的文脈にそって論じていて、著者がムスリムであることもあってだいぶイスラーム内在的な書き方になってるので「新米日本人ムスリムのハウツーとしてはいいかもしれないけど予備知識(あるいは「耐性」?)の無い人には薦められんなあ」と思いながら読んでました。
 が、第二部の現代の倫理問題(医療倫理、情報倫理、政治倫理、経済倫理、環境倫理)が非常に面白い。このあたりの情報をもうちょっと増やしてもらえればよかったのに。サウジも案外柔軟なんだなあと思ったり。
 あまり新書向きではないかもしれない内容でしたが、さはさりながらこの値段でこの内容の本が買えたというのは拾い物でした。


■高橋典幸『源頼朝 東国を選んだ武士の貴公子』
 「日本史リブレット・人」シリーズの1冊。
 頼朝は重要人物なのでかなり早い段階で大まかな部分は論じ詰められてる感があって、この本も大枠ではオーソドックスな記述に終始していた気がします。この本が特に悪いというわけではないですが、似たようなテーマではやっぱり細川先生の『頼朝の武士団』が面白かったなあと。
 ただ、本書は京と東国の関係がどう変遷していったか、頼朝の主体性がどこにあったのか、という点については俯瞰して記述してあって分かりやすかったと思います。


■山本紀夫『梅棹忠夫 ――「知の探検家」の思想と生涯』
 中公新書の新刊。
 梅棹先生の本は『文明の生態史観』を読んで、後はちょくちょく他所で言及されるのを知ってたくらいなんですが、この本を読んで実はとんでもない人だということを知りました。未踏地のフィールドワークに、学術的な新分野の開拓に、60代半ばで失明してからも90歳で亡くなる直前まで著作活動を続けて……。
 皆が皆梅棹先生のようにあることができるわけではないでしょう。「二番せんじは、くそくらえ、だ」とは本人の言葉ですが、やっぱり学問としてはデータの緻密化やその他の目的のために二番せんじをしなければならないこともあるし、後追いであっても細部を固める作業というのも重要ですから。それでも、この生き方には強烈に惹かれるものがあるし、著者の山本先生も梅棹先生が大好きだったんだろうなあと思います。
 文庫や新書で出てる分くらいは、梅棹先生の著作を読みたいところ。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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