近況と最近読んだ本など

 吉川弘文館の『人物叢書 織田信長』がよく売れてて重版が年内に出来するそうで、日本人は信長が好きなんだなあと思います。駅前のジュンク堂でもどっさり入荷してましたが、信長は有名すぎて逆にあまり興味が無いのでありました。ただ、この機会に俗説のイメージを払拭するためにも読もうか読もうまいか悩むところ。
 それと平谷美樹さんの『風の王国』の五巻が出てたので買って読みました。やっと渤海が滅亡しましたが、まだ続きそうな雰囲気ですねえ。まあ割とすらすら読めるので長くてもそんなに苦にはなりませんけれども。
 あとはそろそろ冬休みに入るので今年も何か人物伝でも連載して書こうかなあと思っています(昨年はバイバルスについて書いた)。予定は全くの未定ですが。

以下、最近読んだ本
 


■杉山裕之『覇王と革命 中国軍閥史1915-28』
 民国期の軍閥を扱った史談本。革命史観に裏打ちされた史書しか無いから各軍閥がっつり扱って書いた!というだけのことはあって、中国書籍の割合が高いですが参考資料にあげられている書籍も多く、情報量だけで言えばなかなかのもの。ただ、私はこの時期の中国に詳しいわけではないので断言はし辛いのですが正確性・客観性については微妙なところもあり(煽り文「三国志さながらの攻防」とか書いてあるので最初から不安でしたが、逆に予想したほどひどくはなかった)。
 割と分量のバランスじたいは悪くないですが、記述を見る限り著者は奉天軍閥が好きなのでしょうかね。
 あと、それほど期待していたわけではないのですが、回民軍閥は一人も出ず。まあ中央の動向に影響を与えたかというと微妙なところがあるので仕方がないかもしれませんが。別の本を当たるとしましょう。
 四六判上下二段組で結構頁数があるので読みやすいとは言いづらいですが、面白いのと情報量の多さとで悪い本ではないと思います。ただ、これ一冊で済ませるのには少し問題があるかなと。


■峯岸純夫『新田義貞』
 先の『佐々木導誉』に引き続き人物叢書の南北朝ものの一冊。
 『南北朝内乱と東国』で、凡将イメージのある義貞が、実はそうでもないんじゃないかという指摘を読んでから気になっていたのと、うちの地元の武将の赤松円心と白旗城で激戦を演じたということもあって読みました。
 北畠親房とどうやらうまく行ってなくて、親房にしてみれば義貞軍は使い捨ての軍団にしか過ぎなかったのであろう、とか、中国遠征の失敗が骨身に染みている、とか、後醍醐天皇と尊氏の和睦に際して義貞切り捨ての計画が進んでいた、とかの記述を読むにつけ、「実直な東国武士が、鎌倉幕府討滅の大功績で一躍中央政界に躍り出て、その栄光の重荷を背負い続け、南朝方の総大将に位置づけられての生涯であった」(125頁)というのが核心だろうなあと思います。没年でも39歳だそうですから、気負ってたところもあるんでないかと。このあたりいささか気の毒であります。
 本書の解釈に依るなら、越前制圧を優先して北畠父子と連携して上洛しなかったというのも確かにそりゃあ無理もないでしょう、といったところ。

 で、地元の赤松円心なんですが、人物叢書では『赤松円心・満祐』と題して赤松家の興亡で書かれているのでまだ通読できてません(円心の死去までは読んだ)。そのうち続きも読みます、多分。


■檀上寛『永楽帝 華夷秩序の完成』
 講談社選書メチエから出て、久しく絶版になっていたものが副題を改めて学術文庫版になりました。
 帯に「簒奪、殺戮、歴史の捏造……。その果てに築きあげた、中華の<世界システム>」とある通り、永楽帝と言えば靖難の変で皇位簒奪の後、内向きの明朝時代にあって例外的に積極外交を展開した良くも悪くもドギツいキャラクターの持ち主ですが、彼を中国を中心とする華夷秩序形成という文脈の中で積極的に評価しています。
 父帝の朱元璋にも劣らない血塗られた経歴も余すところ無くがっつり書いてあるものの、それを補って余りあるのが筆者の永楽帝に対する愛というかなんというか。
 前史から説き起こし、靖難の変の簡単な説明と、永楽帝の業績とその位置づけ諸々、というのが概ねの形。
 日本をはじめとした諸外国との朝貢・柵封関係、対安南遠征、対モンゴル遠征などにもそれなりに頁が割いてありますが、西方のティムール朝等についてはあまり記述無し(シャー・ルフとも使節の往来はあったはずだが……)。
 スパッと断定口調で小気味よく書いてあるので読みやすく頭に入ってきやすい本ではあります。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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