近況と最近読んだ本など

 ここのところ自分のプロパーで気軽に読める本が少なくなってきたので(積読と読みたい洋書は多いけど)、今回は四冊とも日本史本です。伝記含めていくらでも本があるので日本史はいいなあと思います。もっとも、中世マイナー史好きの血が騒がないので南北朝動乱期以外はそこまで深入りする気はないんですが。

 というわけで以下、最近読んだ日本史本。
 


■池上裕子『織田信長』
 Twitterの方で随分話題になっていた人物叢書の最新刊の織田信長本。買いに行ったのはつい三日ほど前ですが、相変わらず平積みになっていました。戦国時代について人並み以上に興味があるかと言われるとそんなことは全くないんですが、なんとなく流行りに流される形で購入。
 帯に「英雄視する後世の評価を再考!」と書いてあって、厳し目の評価なんだろうなあと思いながら読んだんですが、それでも信長というのはすごい人間であることに違いはないなあというのが読了して最初の感想でした。逆に俗説をあんまり知らんのですが、これで再考済みということはもとはどれだけ過大に評価されていたのか……。
 部下に仕事の要求はするけど、そのための諸々の準備を捻出するのは全部その部下の責任に丸投げっていうあたり、なんかとんでもないなあと思います。反感を買うような戦争をしながらも、それを食いつぶして勢力圏を拡大していくのと合わせて、ドギツいなあなどとも。
 既存研究の成果を援用しながら「天下」概念について考えてみたり、興味深い話題は他にも多いです。
 親父の信秀についても気になってはいたんですが、その辺の記述はまあ通り一遍。
 読みやすい読みにくいで言えば、人名さえ頭に入っていれば(信長の周辺人物って有名人ばかりだし大抵の人は大丈夫でしょう)すらすら読めるので、その点でもいい本だと思います。おすすめ。


■瀬野精一郎『足利直冬』
 ここのところの日本史のメインの関心は南北朝なので、上の『織田信長』と一緒に買ってきた人物叢書の足利直冬本。父の足利尊氏も養父で叔父の足利直義も出ていないのになぜか出ている直冬……尊氏、はやいところ出ないかなあ。
 著者の瀬野先生が巻頭で「直冬に対してはどうしても突き放した見方しかできない」と断ってらっしゃるんですが、個人的には特に気になることもなく読めました。
 直冬は足利尊氏の庶子で、尊氏の弟直義の養子になった人物。ちなみに最初は尊氏は彼のことを認知していません。結局養父直義と尊氏の仲たがいに応じて直冬も尊氏と敵対することになって、九州・中国と本拠地を変え、南朝方と結んで一時的に京都を押さえるものの追い出されて、最終的に出家して生涯を終えることに。
 私は尊氏のことは別に嫌いではないんですが、こと直冬の件に関してはどうしようもねえ親父だなと思います。正室とその息子の義詮をはばかる気持ちもあったのかもしれませんが。
 直冬の九州での活動に少弐や菊池が関わってるようなので『菊池氏三代』もそのうち読みたいなあと思います。


■網野善彦『異形の王権』
 南北朝時代に関連して、網野善彦先生の『異形の王権』も読みました。
 中世の「異形」とはなんぞや、という論考から始まって、その異形的なものを利用し、自ら異形であった後醍醐帝に関しての論考に達する、という本。
 杉山先生が『ユーラシアの東西』で「いや後醍醐については日本史研究者の言ってることとは違って~」という話をしてらっしゃるんですが、まあそれでもよく読めば日本史上の位置づけに関する核心部分については、特に違ったことを言ってるわけじゃないというのがわかります。

 網野善彦先生は2004年に亡くなられましたが、人物叢書の楠木正成の巻を担当されていたらしく、吉川弘文館に二章までの原稿は届いていたそうで、残念だなあと今更にして思います。


■新井政美『織田信忠 父は信長』
 織田信長の嫡子、信忠を主人公にした歴史小説。
 作者はトルコ近現代史の新井正美先生。最初見た時には同姓同名の別人かと思ったんですが、どうにも著書一覧にトルコ史の本が並んでてああ、あの新井先生か、と。そういうわけで前から目をつけていたんですが、ことのついででやっと購入。
 専門の作家さんではないわけですが、なかなかどうして面白い作品に仕上がっています。
 凡人と天才は私の好きなテーマの一つなんですが、この作品の信忠はひたむきに信長の背を追っていて、時に見失いそうになり、そんな自分に悩みながらも前を向いていて、かつ鼻につくことのない好人物です。
 人物中心なので時系列は回想という形でかなり入り乱れてますが、読みにくいことはなくなかなかいい本だったかと思います。光秀と秀吉以外の信長家臣もあんまり出てこないし、信雄や信孝も名前だけといった風に登場人物も絞られているので、特に混乱することもなく。
 これもおすすめの一冊です。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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