十三世紀の西方見聞録/那谷敏郎


 マルコ・ポーロと同時代に、中国からふたりのネストリウス派の僧が、ポーロとは逆に西方へ旅をしている。本書は、その旅程を追い、背景を解説したものである。
 
 本書の主人公であるバール・サウマーとマルコス(ヤフバラッハー)は、著者によれば中国に住んでいたウイグル人僧である。彼らはイェルサレム巡礼のために西方へ旅をしていたのだが、バグダードのネストリウス派の法王の要請でサウマーの方はローマ、イングランドにまで足を伸ばすことになり、またマルコスはその見識を買われて新法王ヤフバラッハー3世として即位することになってしまう。
 杉山正明氏の『モンゴル帝国と長いその後』で彼らについてそれなりに長い言及があるが、もちろんのこと本書の方が圧倒的に詳しい。サウマーがローマの枢機卿たちと神学問答をしたというような話も載っている。

 本人たちの旅行はもちろん、ネストリウス派の歴史と、当時のフレグウルスの状況についても詳しく、ガザンとオルジェイトゥ時代のフレグウルスの歴史が、その混乱した状況にも関わらず、要点を押さえて分かりやすくまとめられている(ただ参考文献に挙げられているのがドーソンの『モンゴル帝国史』なのでその点、注意する必要がある)。

 サウマーとマルコスの旅行記的伝記は、戦前に『元主忽必烈が欧洲へ派遣したる景教僧の旅行誌』と題して和訳が出ているが、いかんせん古い本なので、気軽に読むならやはり本書がおすすめである。
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鉄勒京二

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