近況と最近読んだ本など

 大学が終わったのでしばらくのんびりできそうです。が、定期が切れた上に資金が無いのでここのところ本屋に行けてないのでちょっとストレスが……。まあ積んである本を消化する分にはいいんですけどね。
 時間ができたので、やっとヌールッディーン伝の6章を更新しました。次はエジプト遠征ですが、これは割合資料も多いのでなんとかなるでしょう。関連する完史の記事を訳し終わり次第、書いていくつもりです。

 以下、最近読んだ本
 

■小川剛生『足利義満――公武に君臨した室町将軍』
■佐藤進一『足利義満――中世王権への挑戦』
 足利将軍の中でも足利義満は別に好きじゃなかったんですが、重要人物だし一応読んでみるかということで二冊。
 小川先生の方は最近出た本で、新書にしては分厚いし(300頁ある)けっこう難しいです。義満が皇位簒奪を計画していたという説には批判的で、まとめると「そもそも構造的に出来るはずがないのでやろうと思ったはずがない」という話になる模様。
 もっとも、論点はそこだけではなくて、義満に関連する事項はひととおり網羅してあるわけですが、義満のブレーンだったらしい二条良基というお公家さんの活躍が印象的。また、従来の武家政権とは違って公家社会に深くコミットした義満以降の「室町殿」の起源を義満に見ることができるのも面白い部分です。
 内容としては人物叢書クラスだと思いますが、これが1000円せずに手に入るのは大変お買い得だと思います(難しいけど)。
 もう一冊は中公の日本史シリーズの『南北朝の動乱』で有名な佐藤進一先生の義満本。初出が'80年なのでちょっと古い本ですが、気軽に読めます。タイトルは義満であるものの、内容としては義満中心ながら尊氏・直義あたりから嘉吉の乱までの通史というもの。
 二冊読んで思ったことは、義満を中心にして歴史を眺めると見えてくるものは色々と面白いけれども、やっぱりタヌキおやじというか、少し人を喰ったところのあるような義満は好きになれないなあ、と。


■久保田順一『上杉憲顕』
 前に『南北朝内乱と東国』を読んで以降気になっていた上杉憲顕の評伝。帯に「名族関東管領上杉氏の礎を築いた名将の生涯」と書いてあるんですが、ひと通り読みはしたものの、名将……? いや、生涯を追っていけばそれなりに有能で時宜に応じていることは分かるんですが、この本で名将らしい印象を受けるかというと微妙なところが。
 一冊にまとめるには史料が少ないのか、かなり微に入り細を穿つような記述が多くて読んでいてくたびれます。きっと予備知識がもっとあれば得るものもあると思うので、ハズレを引いたとまでは言いませんが、上杉氏ファンならともかくちょっと興味があるだけという人にはあまりお薦めしません。
 気になった記述と言えば、直義の死に関して基氏の元服を見届けてからの自害という説があるそうで、これは面白いなあと思いました。


■森茂暁『建武政権 後醍醐天皇の時代』
 南北朝の動乱の引き金を引いた後醍醐帝の建武の新政ってどんなものだったんだろう、ということで森先生のこの本も。前に『佐々木導誉』を読んだ時には知らなかったんですが、森先生って南朝方面の研究で有名な人なんですねえ。
 これも初出は'80年と古い本ですが、文庫化にあたって注や参考文献リストが更新されています。
 建武政権については反動復古か封建王政かという評価の議論がある(あった?)ようですが、とりあえず本書ではそれは棚上げして、今わかっていることをまとめる、という方針になっています。
 南北朝の動乱の政治史はともかく、建武政権そのものについてはあまり知らなかったので(他の本でもあまり見ない)、勉強になりました。
 印象に残ったのは後宇多上皇の政治力がどうやらかなり高かったらしいことと、義満期に顕著になる朝廷が幕府に依存する体制が既に後伏見上皇の院政期に見られること、後醍醐天皇を支えたグループが実は非主流派という共通点を持つとは言え結構雑多な出自を持っていること、などなど。
 建武政権に関する各論的な論点を時代順に項目を細分して並べてあるので、通読してもいいですが、他の本を読む時に辞書的に使っても便利かなと。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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