カイロ/牟田口義郎


 「世界の都市の物語」シリーズの一冊。カイロを中心においたイスラーム時代のエジプト通史。
 
 著者が牟田口氏なので中身は割と人物史とエピソードが中心で、ミーハー向けでユルい。とは言っても内容がありきたりなわけではなく、著者の好みが前面に押し出されているものの、詳しく、かつ面白い。
 扱われている時代はアムルによるエジプト征服と、旧カイロ(フスタート)の建設から、ナセルの死くらいまで(サダトとムバラクも出てくるが、政治史的な言及はあまり無い)。

 アイユーブ朝君主とバイバルス、ナセルについては同じ著者の『物語 中東の歴史』を読めばいいが、トゥールーン朝のイブン・トゥールーンや、ファーティマ朝のハーキム、ムハンマド・アリー朝については本書を読むと良い。特に、イブン・トゥールーンについては邦語で気軽に読めるものがあまり無いので役立った。
 そもそもエジプトといえば出る本出る本古代ばかりなので、そういう意味でも貴重である。

 92年に出た本だが、近現代に入ると、著者の関心はどうもアラブ民族主義で止まっているらしい。エジプトの大衆運動に関して、その後に至る伏流がかなりの程度無視されているのでそれは別の本を当たるのがよいだろう。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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