中央アジアのイスラーム/濱田正美


 世界史リブレット第70巻。タイトル通り中央アジアのイスラームについて扱った本。
 
 西アジアを中心にして歴史について読んでいると、中央アジアというのはどうも埃っぽい田舎か、あるいは「シルクロード」の語でイメージされるようなオアシス都市の連なる「通商路」か、さもなくば尚武の気風ある精強なテュルク人たちの故郷か、どれかのイメージが強くなりそうなものである。
 本書は90頁の小著ながら、中央アジアのイスラームそのものと、それが周辺に与えた影響まで論じてそのイメージを一新してくれた本である。

 中央アジアのイスラーム化の進展を改宗者の割合から見るという記述から始まり、イスラームに関連する学問において、中央アジア出身者が果たした役割を述べる。
 次にテュルク人の改宗とイスラームの中央アジア化を見る。在地の神話がイスラーム的文脈の中に取り込まれていく様子がわかる。
 後半はスーフィズムとモンゴルの侵入とそれ以後について。

 具体的な部分で面白かったと言えば、ムウタズィラ神学派に対抗して出てきた神学派のうち、アシュアリー神学派の影にかくれがちであるが、中央アジアにおいてはイスラームの正統教義となっているマウトリーディー神学派の記述があること、オグズ・カガン伝説やアラン・コア伝説(いわゆる蒼き狼伝説のその後である)が、イスラームの文脈の中に取り込まれていくこと、などなど。

 最初にイギリス国籍のノーベル文学賞作家ナイポールのイスラーム認識に対しての批判から入るのでのけぞるところはあったが、なかなか面白い本であった。
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鉄勒京二

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