ビザンツ帝国の最期/ジョナサン・ハリス


 ビザンツ帝国滅亡までの100年を書く。
 
 ビザンツ帝国の滅亡を扱った本は歴史書・小説含めて数多い。その中にあって本書が特徴的なのは、滅亡に至るまでの経緯に頁を割いていることと、むしろ滅亡にあたって非難されがちな、その責任があると思われる人々に対して、冷静に、しかし同情的な記述を行なっていることである。

 書き出しは、有名なコンスタンティノス11世の最後の演説からであるが、その直後に「悲しいかな、これが事実でないことはほぼ確実である」と続く。著者はロマンのベールをひっぺがし、最新の研究に基いてビザンツ帝国を最後を書こうとしているのである。だが、(日本でありがちなように)実証を重視するあまり事実のみを書き連ねて行くのではなく、推測に頼りながらも、ビザンツの最期に立ち会った人々の人間模様を、著者の人情味をもって描く。
 扱われる範囲は、マヌエル2世の生涯から、コンスタンティノープルの陥落、モレアのビザンツ領とその領主たちのその後まで。皇帝や軍人だけでなく、帝国を構成した様々な人が、帝国の終焉にどのように向き合ったのかに詳しい。また、オスマン帝国の歴史にも水準以上の理解があるようである。

 訳者の井上浩一氏が、訳者あとがきで「歴史はロマンではない」と書いている。本書は、確かにロマンの本ではない。しかし、淡々としつつも決して無感情の本ではないように思う。
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鉄勒京二

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