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近況と最近読んだ本など

 おそらく最後の長期休暇になるであろうということで、相変わらず積読の消化に励んでいます。
 それに、やる夫獅子心王スレの作者さんにいい本だと教えてもらったAnne-Marie Edde "Saladin"を購入して拾い読みしています(訳しても仕方がないので英語のまま流し読み)。ヌールッディーン伝に役立つところは既に指摘してもらっているので、ありがたく使わせていただきます。
 ムワッヒド朝・アイユーブ朝関係を読んだところ、ムワッヒド朝君主にどういう君主号で呼びかけるかで喧々囂々の議論があったようです。アッバース朝の顔は立てねばならず、さりとてムワッヒド朝の援助はほしい……。そもそもアルファーディルはムワッヒド朝が嫌いだった模様(本人曰く「マグリブが暗黒に包まれていると言えど、ナースィル王(サラディン)の正義と勧進は東方にあまねく広がっている。神よ彼に従う者に祝福を」だそうで)。
 「ムワッヒド朝艦隊はイタリア艦隊に比肩しないまでも、それに対抗できる唯一のムスリム艦隊であった」というわけで、この艦隊の援助がサラディンは欲しかったようです。ムワッヒド朝艦隊の実力についてはすごかったんだぞ、という話はちょくちょく見かけるものの、どういう実態だったのかとんと見かけず……まあ史料がないのかもしれませんが。

 てなわけで、以下最近読んだ本。
 


■佐藤進一『南北朝の動乱』
 最初の版が出たのが50年近く前ながら、未だにまずはこれを読めと言われる南北朝時代概説の名著。やっと読めました。動乱の70年を扱うのに本文ページ数は520。いやはや、日本史は実にうらやましいことで(笑)。
 東から西まで、社会の上層から下層まで、個人・制度・事件……この時代のひと通りのことを解説してある本で、文章は読みやすいものの全部を全部噛み砕いて理解しようと思えばなかなか骨が折れます(私も流し読みした部分もけっこうあったり……)。
 この本を読んで日本の土地制度史の基本がさっぱり頭に入ってないということを自覚しました。
 ちなみに、本書の文庫版の解説は南朝研究の森茂暁先生。


■岡野友彦『院政とは何だったか 「権門体制論」を見直す』
 というわけで、日本の土地制度について知るために荘園制についてかなりページを割いてあるこの本も。荘園とは一体何ぞや、というのはなかなかわかりにくいんですが、大規模な土地そのものの私的所有ではなく、一定の土地区画から徴税権などの「国土領有権」を私有化したもの、ということのようです(あってる?)。
 で、その荘園の経済力をバックに力を持っているのが武家、院宮家(本書での表記。ふつう権門体制論では「王家」という)、寺社などの「権門勢家」で、これらが相互補完的に日本という国家を支えていたと見るのが権門体制論であり、その権門体制論の見直しを行う、という本。
 院政というのは、律令的な体制において、王土王民に君臨するという建前の天皇はそもそもあらためて荘園を持つということはおかしいしできないので、院宮家の家長が政治を行うのだ、という説明には、ははあなるほど、とよくよく納得できました。
 ただ一方で読みやすい文章と噛み砕いた説明ではありますが、そもそも扱ってるテーマがややこしいのでちょっと予備知識がないと厳しいところも(学者の名前や専門書のタイトルもちょくちょく出てきます)。
 しかし権門体制論に前から興味があったのと、荘園制がさっぱり分からなかったのもあって、時宜を得て便利な本でした。


■吉川英治『私本太平記』(一)~(八)
 大河ドラマの原作にもなった吉川太平記(ドラマの方は大分脚色してあるようですが)。著者の死後50年経って著作権が切れたので青空文庫にて有志がテキストファイル化したものが無料公開されています。時間のある時にしか読めないだろうと思ったのでこの機会に。
 佐々木導誉が序盤からやたら出張るのが特徴……いいキャラしてる人物ではありますが。吉田兼好や下級武士などに視点を置いて、普通の人々の暮らしにも目を向けていたりして、これは大長編でないとなかなかできないことかなあと思います。その分ちょっと冗長ですけれども。
 義貞があんぽんたんと篤実な人物の間をいったりきたりしてて扱いに困ってるようにも見えたり見えなんだり。


■北方謙三『破軍の星』
 北方太平記の一冊。数年前に買って積んでいたものを消化。
 主人公は『神皇正統記』の北畠親房の息子、鎮守府将軍の北畠顕家。公家ながら奥羽を斬り従えて、京都の危機に上洛を果たし尊氏を蹴散らすというチート級の将軍です。いつもの北方節ながら、わかりやすくて良い作品。
 比較的早くに書かれた作品であるためか否か、新田義貞に対する評価が後の作品ほど酷くないのが特徴。とはいっても凡将扱いなのは変わらず多少理解がある、という程度ですが(笑)。
 一般のイメージ通りの南朝の忠臣としての顕家を書きつつ、奥羽の独立国家という本作独自の「夢」も見せつつ、という工夫はなかなかおもしろいところ。
 敵役ではありますが、数少ない南北朝小説の中でも、斯波家長がクローズアップされたのはこの作品が唯一なのではないかと。上杉憲顕も最初に出てきた時はけっこうボロクソですが、ちょっと成長したところも書かれていたりします。


■安部龍太郎『道誉と正成』
 先日、直木賞を受賞された安部龍太郎さんの南北朝もの。
 これも何年か前に買って積んでいたものです。道誉と正成という組み合わせはどうも、商業で勃興してきた新興武士団という観点かららしいですが、だったら別にこの二人である意味はあんまり無いよなあ、などと。道誉がそれほど「婆娑羅」らしくないのもあわせて、評判通りちょっとできがよくない小説かなあと思います。
 ただ、本作の直義は大変ブラック(内容的には「だいたい直義のせい」で片付けられるあれこれが多いです)で、いい味を出しているので、ブラック直義が好きな人にはいいのではないでしょうか(笑)。兄貴の尊氏はと言えばいいわるい以前に出番があまりありません。千種忠顕をはじめ京都の公家が京都弁をしゃべっているのも特徴です(その割に正成は大阪弁をしゃべってない)。
 あと、円心と正成が酒を酌み交わしたことがあったという台詞があるんですが、だったらそこ書いてよ、などと地元贔屓で思うのでありました。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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