近況と最近読んだ本など

 どうも、お久しぶりです。研修行ったりなんだりで死んでました。これから配属先も決まって本格的に仕事がはじまりますが、ブログの方もゆるゆると続けていけたらと思います。
 あと、合間を縫ってマンガ『ドリフターズ』を三巻まとめて買って読みました。「歴史人物を集めた、俺の考えた最高のバトル」的なノリの熱くて良い作品です。喚び出されている人物の時代と地域に偏りがあるのは多分気のせいでしょうw

 以下、最近読んだ本
 


■岡田英弘『康煕帝の手紙』
 かつて中公新書から出ていたものに、註を足し、種々の論文を補として付けたもの。著者のあとがきによれば社長自らの肝いりで藤原書店が「清朝史叢書」シリーズの刊行を開始しまして、その第一巻ということの模様(藤原書店らしいと言えばらしい試み……かな)。
 康煕帝がジューン・ガルのガルダン・ハーンを討つために北方へ親征している時に、北京で留守を預かっていた皇太子に満州語でこまめに手紙を送っていたんだそうですが、その現物が台湾にあるらしく、そこから読み取れる諸々のことがらを、和訳もはさみつつまとめてあります。前史の部分がちょっとむずかしいものの、主題の康煕帝の手紙を扱う部分は普通に読みやすくておもしろいです。
 この康煕帝の手紙はどちらかと言えば私信に類するものなので、康煕帝がどんなことに興味を持っていたのかとか、息子の皇太子に対して何を諭していたのかなど、ふつうの記録にはあまり出てこないようなことがありありとわかります。
 宮崎市定先生の『雍正帝』と一緒に読むといいかもしれません。いずれにせよ、オススメの本です。


■川添昭二『今川了俊』
 毎度の人物叢書。征西将軍府を抑え、九州を平定した九州探題今川了俊の評伝。今川の活躍の描写があまりに薄いとの理由をつけたりして『太平記』を訂正するために『難太平記』を書いた人でもあります。
 武将としても文化人としても有名な人で(その点、婆娑羅大名の佐々木導誉と似てる)、なかなか興味深い御仁だと思うのですが、この本は了俊のどちらの面もバランス良く書きだしています。
 吉田兼好や、佐々木導誉、例によってどこにでも顔を出すお公家さん二条良基などとも交流がどうやらあったらしく、兼好が書いていた徒然草を集めて編集したのも彼だそうで。関連して、当時の歌壇の状況なども記してあります。
 彼については詳しくないのでどの程度新しい説なのかはわからないんですが、文化面と武将としての活躍を関連させて考え、彼を九州をまとめる一種のイデオローグとして評価してあるのも面白い点です。


■山本隆志『新田義貞 関東を落すことは子細なし』
 ミネルヴァ書房の「ミネルヴァ日本評伝選」シリーズの新田義貞本。『太平記』から距離を取って一次史料からわかることをまず重視する方針で書かれているのでこれでもかと原文が出てきます。伝承やイメージなどの話はあまり出てこない(『太平記』に義貞との恋が描かれる勾当内侍も記述は少しだけ)、かなり骨太で硬派な本です。
 また、義貞にくらべて政治的な立ち回りのうまい岩松家(新田氏の庶家)についてそれなりに詳しいのも特徴。岩松はこの時期、場合と見方によっては本家よりも重要かもしれません。逆にあまり根回しや工作のうまくない義貞は古き良き武士で、そして不器用な人間だったんだなあと改めて思いました。
 悪い本ではないですが、個人的には人物叢書の新田義貞本の方が単純に読む分には好きかなと思います。ただ、ちょろっと義興、義宗についても書いてあるのでその辺気になる人は是非。
 あと、サブタイトルの「関東を落すことは子細なし」って、206頁にある通り楠木正成が「義貞関東を落すことは子細なしといえども」、と、「義貞ではアカン」という文脈の中で言及している台詞でして、表紙にでかでかと載せるのは皮肉がきいているというかなんというか(ちなみに出典は『松梅論』の方で『太平記』ではない)。


■小前亮『唐玄宗紀』
 おなじみ小前さんの歴史小説。唐代は『李世民』、『天涯の戦旗』に続いて三作目ということになります。今回は玄宗とその宦官高力士(!)が主人公。高力士はかなり好意的に書いてあります。唐代の宦官だと張承業なんかは割と肯定的な評価が多いですが、この人選でこの描き方はかなり新鮮ですね。
 政治劇が多く、戦争は少なめで、当然武将の活躍も少なめ。哥舒翰とか李光弼とか、あとは『天涯の戦旗』の高仙芝たちも出てくるには出てきますが、どちらかと言えば脇役です。『中原を翔る狼』は『蒼き狼の血脈』の続編としての性格が強いように思いましたが、今回は時代は連続していても『天涯の戦旗』の続編という性格はほとんどありません。
 戦闘ではない緊迫したやり取りが存分に読めるので、その辺好きな人は是非。しかしながらあまりドロドロした感じをうけないのは文体のせいかもしれません。


■古川日出男『アラビアの夜の種族』
 薦めてもらったので読んだ本。ファンタジーというか歴史伝奇というか。
 千夜一夜に形式を借りて、ナポレオンがエジプト侵攻するという枠物語のなか、語られてゆく一夜毎の物語。
 ネタバレしないように感想を言おうとすると難しいんですが、形式も文体もいかにもあちらの本を和訳した風になっていて、かなりその面での完成度は高いと思いました(読みやすさと仰々しさのバランスが絶妙)。ただ、話の流れはやはり日本人好みになっているというか、必ずしも中東的な明暗のはっきりしたものにはなっていない印象です。特にオチはそうで、あちらの説話や伝承をよく読んでいると、本書の出来の良さがわかると同時に、やっぱり作者が日本人だなあと。
 好き嫌いは分かれそうですが、私はとても楽しめました。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ