グローバルヒストリーと帝国/秋田茂・桃木至朗[編]


 「帝国」をキーワードにしたグローバルヒストリー論集。
 
 阪大でのリレー講義の成果だそうで、東洋史西洋史の枠組みにとらわれず、様々な「帝国」について、グローバルヒストリーの観点から議論されている。
 それぞれの章については別のサイトで目次でも見てもらうこととして、個人的に役立ったのは一章と二章のモンゴル帝国関連の議論である。

 一章「モンゴル帝国と中国―コミュニケーションと地域概念―」は、元代のモンゴルにおいての「中国」地域を扱い、それがいかなる地域を指し示していたのかを考え、その巨大化を確認するとともに、またそれと重なる形で地域認識の個別化が進んでいたことも証明する。「結局のところ漢文化人以外にとって"「中国」統一"という認識はなかった。ないしははなはだ薄かった」とある通り、例えばモンゴルは征服以前に南宋と金に分かれていた「中国」地域を一体として把握していたわけではなかったらしい。またムスリムも「戦争の家」と「イスラームの家」の中間地帯として中国を見ており、中華思想的な「中国」概念とは全く異なった「中国」認識をしていたという。
 二章「モンゴル・シーパワーの構造と変遷」は、主にモンゴルの海上覇権への挑戦について、交易ではなく軍事の面から考察するものである。何回かの海上遠征や、それに君主クビライ自らがどれだけ関わっていたかなどを考え、その全体像を把握する。モンゴルは既存の海上勢力を取り込んだ形だが、その動員力は「組織化」によってモンゴル以前の時代と比べて格段に向上したという。

 他にもイギリス帝国に関する章、ロシア帝国内のムスリムに関する章、日本の開国前後の北太平洋の状況を論ずる章などなどが掲載されている。やや各論寄りであるが、興味がある章があればそこから読んでみるのもいいだろう(ただ、せっかくグローバルヒストリーの本なのだから通読したいものではある)。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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