草原の彗星チムール/森下研


 チンギス・カンの背を追い続け神に抗った男、ティムールの一生を描いた小説。
 ティムールは、西チャガタイ=ハン国の没落貴族の家に生まれ、その一生で幾多の挫折を味わいながらもモンゴル帝国の西半を収める大帝国を築いた征服者である。
 モンゴル帝国を舞台にした小説は数あれど、ティムールを扱ったもので日本で刊行されたものは寡聞ながら本書以外は聞いたことがない。

 サマルカンド近郊のタラガイの家で生まれてから、オトラルで没するまで、その人生を余すことなく書いている。
 ティムールはチンギス・カンとモンゴル帝国の栄光を追い求めて、しかし有能な親族にも同盟者にも恵まれず、チンギスとは違い各地で反乱を起こされた。それでも不器用ながらにがむしゃらに進んでいくティムールに、少しの運があればかつてのモンゴル帝国の版図を回復できたのではないかと思わずにはいられなかった。

 ただ活劇調ではなく、バイプレイヤーの動きも見えづらいので、ティムールに対する興味関心の薄い人には厳しいものがあろう(実際、あまり売れなかったのか新潮社から出版されたにも関わらず新潮文庫に収録されていない)。フサインの死とトクタミシュとの最後の和解に関する描写も薄かったのが少々気にはかかる。

章立て

第一章 モンゴルの心
第二章 イスラム戦士
第三章 二人のアミール
第四章 覇権
第五章 ゴクカンド
第六章 阻むもの
第七章 王者と老学者と
第八章 わが力をみよ
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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